第27話
「パンツ、見たでしょ?」
見てないといえば嘘になる。嘘になるというか、俺はガッツリ見た。その時に彼女が四つん這いになっていたせいで、ただ下着を見たというよりももっと刺激的だった。
「み、見てません」
「本当?」
「え、えっと……」
「嘘つくと怒るよ?」
黒谷さんはじっと俺を見つめてくる。ガチで怒っているような顔ではないが、確実に俺がパンツを見たことを知っている……といった表情だ。
「ちょっと……見ました。すみません」
「ふーん、そう」
彼女は特に怒ることもなく、歩き始めた。俺としては1発殴られたり怒られたりした方がマシなんだが……。
「ごめん」
「別に良いよ、空君だし」
「いや、その……スカート短すぎない?」
パンツを見ておいて俺が言えることではないが、黒谷さんのスカートはとても短い。ギャルの子たちは基本短いが、その中でも黒谷さんは一際短いのだ。
彼女は今日、キャメル色のベストを着ているが、ベストの裾でぎりぎりスカートが隠れるか隠れないかぐらいだ。
足が長いから、お尻が見えそうというわけではないが、思春期の男子にとってはとても刺激的だし悪い大人が見たら彼女を標的にするかもしれない。
「そう? このくらいが可愛いでしょ〜?」
「可愛いかどうかはおいておいて、ほら電車で盗撮とか学校でも階段上がってる時とかさぁ」
「へぇ〜、心配してくれてるんだ?」
「いや、それは……」
「違う?」
と満面の笑みで言われてしまうと、俺は強がることもできないので頷いた。
「そりゃ、心配になるだろ?」
「ふふふ、こっち」
大通りを少し歩いてから、細い路地に入る。学校から歩いて5分くらい、意外に近い場所に小さな公園があった。
公園といっても遊具なんかは鉄棒くらいしかなくて、時間帯もあってか子供たちもいない。
ベンチは2つ、公園の入り口には自動販売機があるところを見ると散歩の休憩スポットになっているのかなと想像ができた。
住宅街の中にあるからか、普通なら公園にあるような木も少なくてよく陽が当たっている。
「私、空君が心配してくれるなら……スカートもっと短くしちゃおうかなぁ?」
「おいおい、それ以上短くなったら痴女だぞ」
「あっ、ひっどい」
「ひどくないよ、確かに短い方が可愛いのかもしれないけどさ。それで寄ってくる男は良くないと思うぜ」
俺もまんまとパンツに釣られている自覚はあるが……。正直、黒谷さんのパンツを他の男子にも見られるのはちょっと嫌だなと感じていた。
「あ、嫉妬してるんだ?」
「違う……けどさ」
俺たちはベンチに座って一息ついた。暖かい日の光に当てられて、さらにはお昼を食べたばかりだったのですぐに眠くなってしまう。
「ここ、いいでしょ? 静かだし、ちょうどよく狭くって住宅街だから道路から丸見え〜って感じでもないしさ」
シレッと話を変えられたが彼女のいう通り、この公園はとても落ち着く。
「確かに……静かでいいかも」
「でしょ〜? たまーにワンちゃんのお散歩のおばさまたちがくるくらいであとは全然。住宅街だから安心だしね〜」
「だな……フェンスの抜け道もなんか良い感じだったし」
「でしょ〜? じゃあパンツを見たお礼をもらっちゃおうかな」
「えっ、あぁ……でもはい」
黒谷さんはちょっと意地悪な感じで眉を動かすと俺を肩をツンと押してベンチの背もたれに寄りかかるように指図した。
俺は彼女にいわれるがまま、ベンチの背もたれに体重を預ける。
「あーし」
「足?」
「閉じて」
肩幅くらいに開いていた足をぴたりと閉じる。電車の中くらいでしかこんなふうに座らないので違和感にモゾモゾしてしまう。
「はい、よくできました」
「お礼って、俺に足閉じさせることかよ?」
「違いまーす」
何を思ったか、彼女は体を俺の方に倒すと、ベンチに寝転がるようにして俺の膝に頭を乗せた。
突如として膝枕をする側になった俺は体を硬直させた。黒谷さんの小さな頭が太ももの上に乗っかっていて、サラサラな髪が手に軽く触れている。俺は服が臭くないかとか大事な部分に触れてしまったらどうしようとかそいう邪心と、気になっている女の子との急接近で嬉しい気持ちとで心がぐちゃぐちゃになっていた。
「く、黒谷さん?」
「ここでお昼寝させてね、パンツのお礼に」
「お礼って……」
マイペースな彼女に呆れつつ、俺はベンチで横になっている彼女の足が気になった。
「ちょっと一瞬いいかな」
「え〜なんで」
「角度によってはそれさ、パンツ見えるかなって」
「え? また見るの?」
「違う」
俺は少し背を浮かせて身につけていたカーディガンを脱ぐと、無防備に曝け出された彼女の足にかけた。
「まじで、黒谷さんガード緩すぎだよ本当にさ」
「空君といると、リラックスしちゃうんだよね」
「俺のせいかよ? けど俺的には……ほら中に履くやつとか考えとけばって思うけど?」
「うーん、考えとくね」
「考えといてくださいよ」
「ちょっと、寝るね」
黒谷さんはそういうとゆっくりと目を閉じた。気になる女の子の顔がこんな近くにあるなんて考えるだけでヤバいが俺は必死に母さんの顔を思い浮かべてそれが性欲に結び付かなようにする。万が一のことがあっては嫌われてしまうからだ。
黒谷さんを起こさないようにそっとスマホを触りつつ、俺は時間を潰すことにした。
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