22話 世界の真理

導く十天導の一人。どうでしょう?びっくりしましたか?」


 確かに言われてみれば構ってほしそうにするところとか似ているところがあるし女性だったって言われた方がピンとくる。なんだ、かわいいおじさんじゃなくてかわいい女性だったか。なるほどなるほど……


「え、まじ?」


「まじです。ふふふ、この瞬間を待っていました。やはり驚いている方を見るのは面白い」


 そうかぁ、まじかぁ。うん、ちょっと落ち着こう、アザレアさんについていったらそこは研究所で実はアザレアさんがじゅってんどう?のひとりで女性だったと。


 ま、ゲームだしそんなこともあるか。


「驚いているかもしれないが話を進めよう。実は、君に頼んだ姫薬草、月光草、硝子蝸牛の素材はどれも試練だった。姫薬草は丁寧に刈り取らなければしおれてしまう。これは街の人に聞いてしっかりとした手順を踏まないと取れないからしっかりと交流を取れているか、そしてしおれたまま取ってきたりしないか人間性を確かめる。月光草はわずかなヒントをもとに目的のものを見つけることができる観察眼を。硝子蝸牛の素材は柔軟さと戦闘力、そして諦めない心を試していた。コーラ君はマスターの助けがあったとはいえそれらを見事に達成して見せたからね。ここに招待して私の真の姿を見せたのさ。」


 なるほど、確かにどれもなかなか難しい難易度の物だったし、マスターの助言がなかったら結構厳しかったかもしれない。他のプレイヤーが達成するのは中々難しいかもしれない。というか、


「ほかの旅人もこの試練って受けられるんですか?」


「ふむ、いい質問だね。もちろん受けることができる。これは後々の話にもつながってくるのだが私がこの試練を課している理由は優秀そうな旅人を見つけては良い方向に成長させること。何かしらの強さを持つものであれば可能性はある。もちろん、私の匙加減だがね!内容もその旅人によって変えるし!でも、中々骨のある人がいなくて……旅人は何回でも生き返れるからと死の淵に諦めるからもうちょっと頑張ってほしいのだけど。私も研究ばかりだと寂しいし」


 他のプレイヤーも受けることは可能で内容が変わるということは探索が進めば進むほど難易度が上がるということでは?しかもたぶん条件がデスペナを避けたプレイをしてるプレイヤーはクエストが発生しないと……他の人も何とか発生させて頑張ってほしいものだな。


「それと、試練を突破した報酬は……はい、持ち運び型インスタント転移門転移門使うのにチャージが必要だけれどどこでも使える転移門。どう?結構役に立つんじゃない?」


 これは……めっちゃ助かる。帰り道を考えなくていいということだから時間的短縮もそうだが、一瞬で使えるのであれば緊急時のテレポート代わりに使えるかもしれない。はい、人権。


「ものすごく助かります。ふむ、もっと早く欲しかったな、谷底から魔法でじわじわと上に上がるのまじでこわいんだよなぁ」


「この転移門は多く用意するといろいろ問題があるから、この試練を突破した人のみが使えるようにしているんだ。使い方によっては危険性もあるしこれを変に改造でもされて大変なことになった例も過去にはあったし。まぁ試練を突破して私の信頼を勝ち得たコーラ君ならそんなことしないってわかってる人に渡すってわけ。あ、そうだ!ここの転移門も使えるようにしてあるからいつ来てもらっても構わないぞ?」


「あーありがとうございます」


 こう、直接信頼を勝ち得たとかいつでもきていいとか言われると流石に照れるな。別にいいわけとかじゃないけどインテリジェンスあふれる雰囲気でアニメで見るTHE・お姉さん見たいな見た目の女性に褒められたらそりゃあ健全な高校生なら照れるに決まってるだろ?むしろ照れないやつは終わってる。いろんな意味で。


 それにしても、アーコズやってるのか不安になる空間だ。ビーカーや乳鉢なんかは街の研究所でもあるかもしれないが、印刷機のような見た目の何かや巨大なフラスコにいろいろなコードが付いたやつとかリアルでもないんじゃないかというような実験器具がある。


 ……考察班に個々の情報教えたら阿鼻叫喚するだろうな。そんなこと秘密にされてるから言わないし、されてなくても自分の命が惜しいからそんなことしないけど。


 でも実際この場所の価値はすごい、アザレアさんは世界の真理といっていたがなるほど確かに世界の真理だ。馬鹿な俺でもこの空間が存在しているということは過去にこのレベルの文明が存在していた、もしくは今もどこかに存在しているという可能性について気が付くことができる。これが考察班だったらそれすらも断定してより深い所、まさしく真理を知ることも出来るかもしれない。


「そして一つ約束があったな」


「え、なんかありましたっけ?」


「コーラ君がまだ扱えなかった称号英雄を破りし者ヒロイックフォールについて教えると言っていたじゃないか」


 あーそういえばそんなこと言ってたな、それいじょうに色々とありすぎてマジで忘れてたわ。


「ふっふっふ、確かにいろいろとあったから忘れるのもしょうがないかもしれないな」


「結局なんで使えなかったんですか?」


「せかすではない、早い男は嫌われるぞ。原因についてだが、称号を構成するに足る素はあるが認められるほどの歴がなかったこと……これじゃわからないかな。かみ砕くと、英雄とは自身が英雄になるのではなく周囲に英雄だとたたえられるほどの活躍をしそれに値する器の持ち主が英雄という存在になれる。例え、英雄と呼ばれてもいいほどの活躍をしたとてそれが悪人であったりまぐれでの勝利だったとあれば英雄と呼ばれることはない。そのため称号として一応表に現れる活躍、コーラ君で言えばトプスという英雄に理由はともあれ勝ったことで称号として出てきたが、それとは別にそれに相応しいといわれるほどの器を人々に、。という点が足りていなかった。」


 ふむ?ということは?称号に見合うほどの器が俺自身になかったということか?


「器か……」


「だが、色々あった故か今ではすでにふさわしいと認められている。」


「ということは?」


「うむ、コーラ君。今の君であれば扱うことができるだろう」


 まじ?トリガーはエネミーボスの討伐か?だが、なんにせよ使えるようになったという事実がわかれば十分だ。多分考えてもわからないだろうし。


 さてさて、どんな効果だ?今までは伏せられていて見えなかったからな。どれどれ、


英雄を破りし者ヒロイックフォール 

 通常ステータスが敵と5倍以上の差がある場合合計ステータスが3倍、となる。


 おぉ、雑に強い。合計ステータスが3倍されるわけだから今までと比べて3倍速く動けて3倍硬くて、3倍攻撃力が高くなるということだな、当たり前だけど。基本ボスモンスターはステータスに5倍の差はあるだろうし、なんならステータスに振っていない俺の通常ステータスであればそこら辺のモンスターでも常に3倍になるな。


 うん、強い。


「ふっふっふ、楽しそうだな。ほら、コーラ君こちらへ。紅茶を飲んで一度落ち着くといい。どうだ?お菓子もあるぞ」


「あぁすいません。……ふぅ美味しい。これはマドレーヌか。うん、これもうまい」


「それならよかった。私の手作りなんだ」


 なんと、うん、めっちゃうまいから店売りかと思った。


「そのなんだ、人に食べさせる機会はなかなかないからな。ほめられるというのはこう、恥ずかしい」


 ……ふぅ。口に出てたか。


「えっとうん、お店で出しても売れると思いますよ?」


「そう言ってもらえるのはうれしいが私はあまり町へは出られないからな。店を開くほどの余裕はない」


「あーそうなんですね、まぁ有名な方みたいですし、えっと、なんだっけ?じゅってんどう?」


「そうだな。十天導、太古から今まで世界を導いてきた10人のことだ。これ以上のことは今は言えないがこれからコーラ君たち旅人がより世界を知ればいずれ知ることもあるだろう、その時が来たら真理について少しずつ触れる時がくるさ。口上でえらそうなことを言ったが、真理を私が教えるということはあまりないだろうな」


 まぁ、そういうもんだよな。全部聞いてもつまらないし。


「そうだ、もしよければもう少しお話をしないか?コーラ君の冒険の話を聞きたい」






 この後めちゃくちゃお話した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る