20話 硝子蝸牛

「さて、どうしよっかな。刀ができるのは1週間後。イベントまであと4日、まさか武器が間に合わないとはな」


 昨日、第1の町のフィールドボス有翼の偽龍蛇龍に憧れ空を夢見た蛇を倒し、レアモンスターの悲表の虚影、エリアボスの紫焔の影武者をも倒すというハードすぎる一日の終わりに創生武器ジェネシス・ウェポンをリュビさんに作ってもらう約束をしたがその武器が出来上がるのが1週間後とまぁ、間に合わないことが決定したわけで、うん、当初の予定通りアザレアさんからお願いされたお使いクエストの最後、硝子蝸牛インビシブルスネイルでも倒しに行きますかね。ただ、その前に……


「リュビ~、来たぞ~」


「お、さっそく来たね。できてるよ」


「初めてお迎えされた気がする」


 今までは最初にここに来た時サピロスがお迎え?というか警戒?してくれただけだったからな。それ以降は無断で入ってるし。


「あはは、そうだね。今日はちょうど休憩中だったんだ」


「それは邪魔したな。で?武器は?」


「本当に邪魔したと思ってる?別にいいけどさ。取ってくるから待ってて」


 さてさて、いったいどんな武器ができるんだろう?オーダーメイドでオーダー通り完璧に作ってもらうのもいいがこう、ドキドキしながらどんな武器か想像して貰った武器をどうやって活用するのか考えるのも面白いかもしれないな。


「おまたせ。じゃーん、これが悲魂結晶から作った武器。悲怨ぴえんの大鎌、自信作だよ」


 悲怨ぴえんの大鎌……大鎌……おおかま、ふむ、扱えるかこれ?2メートルくらいあるなこれ。


「大丈夫、大丈夫。重い武器は使えないと思ってたからちゃんと対策してるよ。ほら、持ってみて」


「はぁ、えっと……おぉ、軽い。どれどれ……」


 悲怨ぴえんの大鎌

 ATK+600

 MATK+300

 固有スキル悲痛な呼び声トラオア・ルーフェン

 死してなお悲しみ、恨む魂を取り込み作られた。漆黒の大鎌は生前の心のごとき漆黒で出来ている。敵の首を刈り取りやすくするためか非常に軽く作られている。


「つっよ。てか、めっちゃ軽いな片手剣程度の重さしかないぞ」


 攻撃力今使ってる剣の2倍あるが?固有スキルに関しては使ってみないとわからないがこの攻撃力でこの軽さというだけでメインウェポンでもいいくらいだな。今まで鎌なんて使ったことないからスキルが無いのがネックだが、イベントでも十分使える。練習しなくては。


「魔力でなるべく軽くなるように作ったからね」


「助かるわ、これで重かったら使い場面が大剣と被るところだったわ」


 まぁ、こないだもらった大剣は非物質系のてきがおおくてゾンビ1体切りつぶしただけしか活躍してないし、それと比べたらMATK+300がついてるし非物質系にも出番がある分まだ使う可能性は大いにあるがその使い方だと次に使うタイミングがいつになることやら。


「大切にしてよ。あ、そうだ!修理は多分僕じゃないとできないからここまで来てね。じゃあ、僕は作業に戻るから」


「あぁ、わかった。ありがとう」


 さて、じゃあ硝子蝸牛インビシブルスネイルを倒して使いクエストチャチャっと終わらせますかね。いざ行け、令月高原。





「はい、という訳でやって来ました令月高原」


 第1の街から西に徒歩10分(走ったけど)特に強いモンスターが出ることも無く、サラリと着いた。


 山々に囲まれ、大きめな岩が所々に転がり、膝下以下の小さな植物が生えている。日本じゃまず見られない風景。


 うん、こうゆう風景を見られるのはゲームならではだな。


「さて、水場にいるとマスターは言ってたけどどこにあるんだ?」


 なんかめっちゃ空気乾燥してるしぱっとみ周りに水場は見えない。


「とりあえず探索だな」


 令月高原は第1の街周辺エリアにしては難易度が高く、ロックリザードを中心に強力なモンスターが多く生息しておりそいつらがいい素材となったり、フィールド上にも鉱石の採掘スポットが多くあるらしく初心者がワンチャン賭けて挑んでは全滅したり、知らずに入って気が付いたらデスポーンしていることから初心者殺しの高原と呼ばれている。まぁまぁレベルが高いが素材が美味しいモンスターが多いため人気のエリアとなっていた。現在はある程度強くなった人はより先のエリアに行くし一時期ロックリザードが乱獲されたために起きた値崩れでロックリザードの素材が高く売れない。そして定期的に起こるによる突然死によってフィールド上は閑古鳥が鳴いている。というのが現在のこのフィールドに対するプレイヤーの一般認識である。


「ふぅ、結構進んだけど。モンスターとのエンカウントが多くて結構疲れるな、プレイヤーが少ないからたまってるのか?というか、しっかりしたフィールドの探索ってツァーリ旧探鉱山廃坑か無魔平原しかしてなかったし普通がこれなのか」


 ツァーリ旧探鉱山廃坑は超人気エリアでモンスターが沸いてもすぐ倒されてたから少なかっただろうし、無魔平原は駆け抜けたからまずあまり戦ってないし。霊魂不滅れいこんふめつの峡谷は未探索エリアで絶対普通のフィールドじゃないし、あれ?もしかして、俺変わってる?まぁ、今更か。


「っと、それにしても切れ味やばいな」


 第2の町周辺のモンスターと比べても強いと言えるロックリザードのくびちょんぱ出来るのは普通にやばいのでは?しかもスキル使用無しでですよ?しかも多くのロックリザード君とその他もろもろの献身的な協力のもと得られた検証の結果固有スキル悲痛な呼び声トラオア・ルーフェンは自身のHPを1割削りあいてのHPを固定値削るものだとわかった。ロックリザード相手だと10発で倒すことができた。


 さて、このスキルは強いでしょうか?


 正解は強いです。


 少なくとも俺はそう思うけど、性格が結構出る気がする。例えばこの先めちゃくちゃ硬い敵、ロックリザードもめちゃくちゃ硬い敵だが硬さ全振りみたいな敵が出てきた場合このスキルがあるだけでそのフィールドは美味しい狩場となるし、紫焔の影武者の時のようにダメージが全然通らない場合このスキルを使い続ければいつか勝てる。とわかれば回避主体で戦う俺にとっては救いの一手となるし簡単に使える貴重な遠距離攻撃となる。もちろん、HPが削られるというデメリットもポーションの消費は元から少ないしあまりデメリットには感じない。


 これが、魔法職となるとこんなスキル使ってないで魔法とりあえず撃っとけとなったり、近接でもHP代償に少しのダメージを与えるだけならほかの使い勝手のいいスキルがいいと言うかもしれないから一概には言えないけど、まぁあたりだと思う。


「お?ここは洞窟か。ありそうだな」


 さっきまでのカラっとした空気とは打って変わりじめじめとしたまさに洞窟といった感じの空気になったし、この先なら水場があってもおかしくないはず。


 モンスターが出ることもなく入り組んだ洞窟を奥へ奥へと進んでいく。地上フィールド上であればフィールドボスを倒せば全マッピングがされるが地下はその対象外なのか一つ一つ地図を埋めながら探索していく。


「ここも鉱石スポットかな?ここモンスターも出ないし生産職にとってはありがたいだろうな。そもそもここに来るまでの難易度高いけど」


 あと一ヶ所だけだな。そこになければまた一からだ「チュドーン」な……






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