前のエピソード――10話　月光草

「レンタルルームで作業をしているみたいですので、少しここで待ちましょうか」

　妖女さんの案内でとても大きな建物、裁縫師ギルドに訪れた。最上階がギルド受付となっており、下の階はデパートのようにいろいろな服が売っている。NPCも多く買い物に来ているようでとてもにぎわっていた。あまり服に興味がないから誘われないがおしゃれが好きなプレイヤーであったらここは天国だろう。

　ちなみに、生産職系のギルドはそれぞれ、生産のための部屋をレンタル料を払うことで貸してもらえる。頑張れば個人工房を持つこともできるらしいがとてもお金がかかるためほとんどのプレイヤーがレンタルルームを借りているらしい。

「お待たせ～妖女ちゃんが人を連れてくるなんて珍しいこともあるわネェ」

「ご無沙汰しています、ちぇりーさん。こちら、最近フレンドになりましたコーラさんです。防具を作りたいとのことで、紹介をと」

「あーコーラです。なんかいろいろあって紹介してもらいました」

「あらぁ、妖女ちゃんが連れてきただけあってなかなかいい子そうネェ。私を見ても特に反応をしないなんて、ウフフ」

「いやまぁ、バニー姿に比べれば.....」

　流石にバニーじゃなかった。うん、バニーじゃ。ただ、筋肉ムキムキのおねぇで魔法少女の格好をしていたけど。まぁ、肌露が少ないだけセーフ。

「バニー衣装もあるわよぉ？ちょっと待っててね、今着るわネェ」

「遠慮します」

「ウフフ。防具が欲しいのよね？」

「はい、ただ、今は手持ちがないので作ってもらうとしても今すぐにではないんですけど.....」

「あら、そうなの？そうねぇ、こちらに任せてくれるなら、原価でしかもツケでいいわよぉ？」

「いいんですか？もとから軽めでという以外はお任せしようと思っていたのでとても助かりますけど.....」

「えぇっと、そうねぇ、構想はすでにできてるし素材もあるから明日の午後には渡せると思うわよ」

「はや！それでお願いします」

「承ったわ。妖女ちゃんいい子を連れてきてくれたわネェ」

「紹介した私が言うのもなんですが、コーラさんいいんですか？もしかしたら、次来た時魔法少女の格好をさせられるかもしれませんよ？」

「流石にそれはないだろ？え、ないよね？」

「.....ないわよ」

「おい、一体俺に何を着せようと思ってたんだよ」

「私の色違い」

「おい」

「ストップ！ストップ！その拳おろしておろして。まったく、ほとんど冗談じゃない。流石にそこまでやらないワよぉ」

「ほんとですか？ん？ほとんど？」

「こーらちゃんにとびっきり似合う防具を作ってあげるから安心していいわ。時間もあまりないし早速取り掛かろうかしら。うふふ、楽しみだワぁ」

「不安だ」

　不安だ。本当に不安だ。

「ということが昨日合ったな」

「え、まって、イベントの話しようと思ったんだけどなんかコーラがすごいことになっててそれどころじゃないんだけど」

　終業式が終わった放課後、放送で先生に呼び出された俺と悠里はあの女帝に呼ばれるなんてなにしたんだお前ら？というクラスメートの視線を浴びつついつもの会議室に足を運んでいた。

　今までも定期的に使っていたこの会議室だが、普段はだれも使わない教室のためほこりがたまっていてここでご飯を食べるのは正直あまり気が進まなかったけど、明日から夏休みだからか、きれいに掃除がしてあり静かな教室でおいしいご飯が食べられそうな空気が漂っている。……いつもこれくらいきれいだといいのにな。

　生憎と今日はご飯を話しながら食べるでもなくただ話をするだけに集まってるが。先生も今日は終業式で相談などでこういった会議室を使う人が多いと理解しているからかわざわざあまり使わない放送で俺たちを呼び出したのだろう。

「凄いことって特にしてないだろ？確かに特殊なクエストを受けてはいるがこのゲームは、そう言うクエスト結構あるみたいだしお前らもどうせ握ってるんだろ？」

「確かに僕達もそういうクエスト進めてるけど、そんなコーラほど凄そうなものじゃ……。」

「コーラくん、あなた本当に何も知らないのね。いい？あなたのフレンドさんのスク水を着た幼女そして、魔法少女の服を来たオネェ、どちらもめちゃくちゃ有名なトッププレイヤーよ。」

「あー、やっぱそうだったのか。無駄に強いと思ったんだよねぇ。あのスク水。」

　一応全員が行けているわけじゃない第2の町のフィールドで全然ダメージ食らってない時点でうすうすそんな感じはしてた。

「思ったんだよねぇって、まぁ、コーラらしいけどさ」

「ほんとね、私の弱味を握ったのにあんなことやこんなことを命令しないコーラくんらしいわ」

「おい、今からでもあんなことやこんなことしてやろうか？」

「いやぁん、教え子にわからされちゃうなんてぇ」

「おらよっと」

「頭われる割れちゃうから！」

　全く、学校ではあまり出すなっていってるのに。

「はぁ、で？お前らもイベント出るんだろ？むしろそのためにソロでやってたんだから。出ろよ？」

「もちろん、強制されなくても出るよ。僕もコーラみたいに今はスキル集めてる最中かな」

「私ももちろん出るわよ。仕事もほぼ無いし。で、今回の賭けはどうするの？私が勝ったら君たち2人の絡んでるシーンの撮影会をしたいのだけれどあなたたちは？」

「俺はそうだなぁ焼肉でも奢ってもらおうか。めちゃ高いやつ」

「僕は君たちのお金でみんなで旅行に行きたいかな。海行きたい気分なんだよね」

　ふぅ、毎度の事ながら賭けの内容がなかなかえぐいぜ。特に、先生。

「だが、実際問題、やり合えるのか？結局ポイント勝負になりそうでちょっと消化不足なんだが？」

　2/10000の確率で出会うことはなかなか難しいだろう。もちろん中には出ない人がいるだろうからもっと確率は高くなるんだろうが、それにしても直接戦うことはできそうにない。

「まぁ、無理でしょうね。探し回るには時間がまありなさそうだったし、ポイントを集めないと本末転倒よね」

「だったらさイベント終わったあとに僕達でPvPやらない？勝ったらプラス50ポイント見たいにルール決めて」

「おぉ、いいじゃん、PvPルールあったんだな」

「うん、あまり使われないけどね。今はまだみんな探索に集中しているし、武器防具の耐久度も削れちゃうから」

「なるほどな、よし！それで行こう」

「えっ、あー、魔法職の私結構辛いんだけど……」

「え、負けた時の保険ですか？さすが先生年取ってるだけあって保身の仕方が上手いですね」

「コーラ失礼だよ、女性はいつまでも若く見られたいんだよ。あまり、歳のことに触れないであげて」

「うぅ、ババアじゃないわよ！そういうこと言うんだったら私にも考えがあるんだからね！場所はどっか適当なフィールドでやるわよ。」

「いや、ババアとまでは言ってないが」

　先生は魔法職って口滑らせてくれたな。まぁ想像通り。でも、悠里のジョブ全然分かんねぇんだよな。支援職が多い気がするけどうーん、わからん。俺はそもそもジョブについて隠してはいないが。というかバレてたよね。俺基本アタッカーしか使わないし。でも、1人だけ職業がバレてないってのもずるいよな、ここはカマかけてやるか。

「悠里は防具買ったのか？」

「悠里くんは欲しいスキルとかないの？」

「ぷっ、コーラも先生もわかり易すぎ。しかも全く同じタイミングで切り出してくるなんて仲良いね2人とも」

「おい、被せてくんなお前のせいでバレただろうが」

「こっちのセリフよ。そんなに私のこと好きなの？でもごめんね私コーラには悠里くんと付き合って欲しいの」

「やっぱり仲良しじゃん。それに、そんな露国に仕掛けてこなくても僕だけ隠したままじゃ不平等だし教えてあげるのに、魔法職だよ」

　なんだ、魔法職か。となるとやっぱり支援寄りなのか？でもPvPに自身あるみたいだったし違うのか？でもまぁ、魔法職ってことがわかったのは大きいな。それだけである程度の戦略は練れる。