3話 多彩な蛮人
「えーっと、ここであってるよな、うん」
手元にUI表示させたマップで再度確認し、様々なお店で賑わう大通りで武器を売っている、現実の価値観からするとちょっとおかしな店である鍛冶屋へと足を運んだ。
ほんとにここで合ってるのか?俺がなりたいのは鍛冶屋じゃないんだけど……
「あら、いらっしゃい!何か聞きたいことがあったら遠慮なく聞いてくれ」
「実はトプスさんから紹介して頂いて……これをダルマンさんに、と」
「どれ、見せてみな。ふむふむ、こりゃ確かにさんかトプスさんからの手紙だね。あんた、名前はなんて言うんだい」
「コーラです」
「それじゃコーラ、すまないがこれは確かに夫……ダルマンじゃなきゃ判断出来ない。そろそろ帰ってくると思うから店の商品でも見て待っててくれ」
「分かりました。」
ふむ、鍛冶屋というから武器や防具が多く並んでいるものかと思っていたが、包丁やスコップみたいな日常品が多いな一応武器もあるみたいだが最低限の物しかない。多分ここは冒険者向けではなく一般住民向けなんだろう。
「それにしてもあんた、あのトプスに認められるなんてなかなかやるじゃないか。いや、書いてあることである程度分かるが本当に一体何をやったんだい?」
何をって……エミリーちゃんという娘が怪我しそうになった時に助けたり、その縁でちょーーっと、騎士長?のトプスさんと訓練相手として30回くらい戦って、そのうち29回負けただけだな、うん。特別な事はしてない。
「特別なことはしてないって……最初のも気になるが、あんたあのトプス相手に30回も勝負を挑んでしかもそのうち1回は勝ってるんだろう?」
「いやぁ、初めはこの世界に来たばかりだし体の調子を確かめつつ馴染む武器種がないか探すだけのつもりだったんですけどね……それに勝ったわけでは」
「だが一撃貰って負けたと書いてあるよ?」
「いや、確かに一撃入れましたけど別に勝ったわけじゃ……いや、トプスさん的には宣言したとおりに一撃貰った時点で負けなのか?」
「あんた、トマスがこの国でも5本の指に入る強さだって事を知っても同じことを言えるかい?」
え、嘘あの人そんなに強かったのか……そりゃ勝てんわ。
「おう!帰ったぞ!」
「あんたにお客さんいや、
「どれ……ふんふん…………ほぉ……ハッハッハ!そうか、コーラ、てめぇ俺らの仲間……
え?いきなりすぎない?もしかしてこの人もトプスさん側の人?もしかしてこの国って脳筋寄りの人しかいない?もうちょっと詳しい説明解かないのかね。ただ.....
「なります。」
なるしかねぇよな。隠し職業っぽいし、他に旅人がいないってことは俺が初めての発見者。そして俺はいまだステ振りすらしてないから断る理由がない。
「即答か!気に入った!」
「あんた、いいのかい、もう少し悩んでからでも遅くないよ。」
旅人の仲間が他に居ない。ってことは現状俺がこのクエストを最初に受けるって言うことだ。俺は一応ゲーマーだ。そこに未開拓の地があるのなら!受けるしかあるまいよ!
「おっし、それじゃあ新人!着いてこい!いいか、今から見ることは口外禁止だ。」
そう言って奥部屋に入り、壁に掛かっている剣を下にすると…………「ガコン、ガガガガ、ガガッ。」
「さぁ、ここが俺の……俺たちのギルドだ!」
良いねぇ、こう言うギミック的なの男心をくすぐられる。
どこにでもある様な鍛冶屋、そしてその部屋にあるカラクリを作動させ現れた地下階段を降り、先にある扉を開けるとそこは……
筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉
うん、やっぱりこのクエスト破棄しようかな。
「「オラオラオラオラオラオラオラァ」」
上半身裸のムッキムキの男達が互いの肉体に回避すらせず自慢の拳を叩きつける。拳が肉体に触れる度飛び散る汗がただのじゃれあいではなく本気であることを伺わせる。男たちには、闘志に似たようなモヤが纏っており……まぁ、要するに暑苦しい。やっぱりこの国には脳筋しかいないようだ。
「しゃぁぁぁぁああああ!」「くっそぉ!」
どうやら左側のマッチョが攻撃に耐えられず後ずさったことで右側のマッチョが勝ったみたいだ。
「どうだ?なかなかいい所だろう?」
「えっと……なかなかいい部屋デスね。」
実際、薄暗いなか心地の良いBGMが流れているというめちゃくちゃオシャレなBARみたいで、ギルドとは思えないとてもいい雰囲気だ……筋肉がいなければだが。
「そこまでだ、おめぇら新人が来たぞ!」
「「「何?新人だと?」」」
あぁ、筋肉がよってくる。まさに肉壁。せめて服を着てください。
「あ~、俺は旅人のコーラです。トプスさんから紹介されて来ました、よろしくお願いします。」
「何?あのトプスさんにだと?」
「ほぉ、やるなぁ」
「どうだ?俺と戦わないか?」
「お前らだまれ!、改めて俺の自己紹介をしてなかったな。俺はダルマン、このギルド……
ダルマンさんギルマスだったのか……
「そういや俺まだ、
「あー、詳しいことはBARのマスターに聞いてくれ、俺はそういう説明は苦手だからな。ま、何かあったら言ってくれ。じゃ、マスター後は頼む。」
脳筋だからね、しょうがない。
「かしこまりました。コーラさん初めまして、皆さんからはマスターと呼ばれております。これからよろしくお願い致します。」
おぉ、渋い、かっこいい!すらっとした長身にちょび髭、完璧なマスターだ、俺も年取ったらこういうおじさんになりたいものだ。少なくとも筋肉マッチョにはなりたくない。
「それでは長くなりますが説明させていただきます。まず、職業について説明致します。最大の特徴は適正武器がないことです。剣士であれば剣、魔法使いであれば杖と言ったように適性が有ります。本来であれば適性武器を使用することで攻撃力が1.2倍されますが、適性武器が無いためその補正を受けることができません。しかし、
「おお、これは…………」
控えめに行って神職業では?攻撃力が多少下がるなんて対したデメリットでもない……いや、本来であれば火力不足になるのかもしれんが、どんなスキルでも使えるのであれば大きな隙では大剣を使うなどすれば火力不足は補える。戦術の幅という面で言ったらこの職業に優るものは無いんじゃないか?
「ですが、デメリットもあります。適性武器による補正がないのもそうですが、重要なのは武器による攻撃の際自身の攻撃力が半減することです。」
……ゴミ職業では?
他の職業と比べると単純火力に2倍近い差があるのは流石に無理だろ。敵が倒せないことは無いんだろうが討伐に2倍時間がかかるのは効率があまりにも悪い。
敷いていうなら何をするにしても1つの武器じゃ飽きるし、多くの武器使える方が面白いに決まってるってことだな。そう考えるとうん、FPSとか格ゲーで同じキャラを使い続けたほうが強くなるのにすべてのキャラを同じくらいの頻度で使う俺にはもってこいか。
「次にこのギルドでできることについてお話致しますが、それほど多くはありません。お酒とお食事くらいですかね。僭越ですが私が作らせていただきますので、食べたいものが御座いましたら仰ってください。」
くそ、未成年でお酒が飲めないのがきついな、こういう雰囲気(筋肉抜き)だとやはりお酒が飲みたくなる。
ちなみに。俺は未成年だが、一応お酒を飲むことができる。自動的にただのジュースになるからただただ高いだけだけど。たばこなんかもシガレット味の煙が出るものに変わる。そこらへんはレーティングがしっかりされている。悪影響がどうのこうのいう人が多いからそれ対策らしいけど世界観的に矛盾が生じるから苦肉の策って聞いたことがある。
「それはありがたいですけど、クエスト……いや、モンスターを倒したり薬草採取みたいなものは無いんですか?」
「そういった物はこちらが適切に割り振ります。基本的に拒否権はありませんが、達成出来なさそうであればご相談下さい。そうですね、このギルドで出来ることは、お食事と相談、後は地下闘技場の利用だけですね。地下闘技場では亡くなってもなくなる以前の状態で復活しますので是非全力でやって
そうだな、今ぱっと思いつく気になることはないかな。しいていうなら、
「どうやったらマスターみたいに渋い男になれる?」
マスターは常に微笑んでる表情を全く変えずにしかし、確かに優しく微笑む。
「コーラさんにおひとつ老骨から助言を致しましょう。」
巣から飛び立つ雛鳥よ 親を知らない雛鳥よ 己を鳥と信じず
己を信じよ 多くを見聞し 己を了得せよ さすれば鳥は龍にも魚にも成るだろう
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