第7話
「えっ!? 私はだめなのかな……」
一転して肩を落とすリベラに、ロアは指を立てる。
「1つ、独身であること。2つ、場を乱さない程度の教養が備わっていること。3つ、犯歴がないこと。この全てを満たしている必要があるの。だからリベラちゃんは――そうね、年齢的に心配だけど、権利はあるってことになるわ」
「やったあ!」
「それでね、この流れから何となく察せられると思うけど……実はその舞踏会の招待状を貰ったの」
ロアは封筒をテーブルに乗せると、サフィラスの手元にスライドさせる。
「受け取ったのは、私達が外出していた時かい?」
「ええ。サフィラスちゃん達が戻ってくる、1時間くらい前かしら。突然従者の方が来て、「こんにちは。あなた方を我が王の主催する“白百合の舞踏会”に招待したく、馳せ参じました」って」
「――」
「返事をする間もなく帰っちゃったから、どうせなら二人の意見を聞いておこうと思って」
サフィラスは小さく頷くと、封筒を囓るネーヴェをリベラの手の上に移動させる。
「病み上がりなのにも
「そ。寝る前に話すには少しカロリー高いかなって思ったんだけど、返事を遅らせて問題にしたくなかったから」
『成程、市場での視線はそういうことだったのか。けれど単に封筒を渡すだけならば、こうしてホテルに赴けばいい。あの場での接触は不要な筈だ。 ……彼女には、別の目的があったのだろうか』
サフィラスは暫し思案すると、封筒をロアに差し戻した。
「であれば、二人で行くと良い。私は、ネーヴェと共にこの部屋で待機しているよ」
「あら、残念……でも分かったわ。みんなの意見もまとまったことだし、とりあえず開けてみるわね」
そう言うとロアはペーパーナイフを用い、手紙を取り出す。しかし、いくら待てどロアは内容に目を走らせるばかりで、一向に声を発する気配はない。
「どうかしたのかい? 何か記載事項に問題でも?」
サフィラスの問い掛けに、リベラもロアの背後に回って覗き見る。そして彼女は、簡潔に真実を述べた。
「えっと――「サフィラスも参加してね」って書いてあるよ」
「……そうか、ならば誘いに乗ろう。明朝、“白百合の舞踏会”について教えて貰えるだろうか」
時計は既に23時を指しており、リベラは欠伸を手で隠す。ロアは手紙を折り畳むと、ポシェットから寝顔を覗かせるネーヴェを一瞥した。
「分かったわ。――そうそう、さっきは晩ごはんありがとね。明日の朝は期待しといて頂戴?」
微笑むロアは、すっかり普段の様子を取り戻していた。
◇◇◇
そして翌朝。爽やかな日差しを受けながら、彼らは活力を得る。テーブルに並ぶのは、ホテルに勤めるコックが調理した、王道ながらも手の込んだ朝食。
オムレツとサラダ、焼き立てのパンにフルーツヨーグルトと彩り豊かな品揃えに、リベラは手を止めることなく食べ進めていく。
「ん〜、美味しい! このオムレツ、デミグラスソースが中に入ってるんだ!」
「ね! “秘密のオムレツ”って書いてあるから、何かと思ったけど……切ってから分かるワクワク感がたまらないわ!」
2人が談笑する傍らでは、ネーヴェも一生懸命に口を動かし、その小さな身体にオムレツを詰め込んでいる。しかし一方でサフィラスは、カトラリーを動かすことなく思案に耽っていた。
『市場での老婆といい、尾行していた彼女といい、仮面が効力を発揮していないのは何故なんだ? 事実、複数の店に立ち寄ったが、皆リベラしか認識していなかった。 ……あの二人は、此方の情報を知り得ているのだろうか。だとすれば、出処は一体――』
仮説に辿り着く直前にリベラ達の視線を感じ、サフィラスは
◇◇◇
やがてテーブルの上がティーカップのみになると、雑談は本題に変わる。朝食と共に運ばれてきた、2通目の緑蝋の付いた封筒。サフィラスは1通目と合わせて目を通すと、端的に所感を述べた。
「……随分と一方的だね。これでは選択肢など、
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