13 帰宅時間  12月12日


 帰宅時間にリミットがある。

 特に学生達は門限があり、育児に奔走する若き父母は、保育園の迎えだとか子どもとの風呂の時間だとか夕食だとかで、「どんなに遅くてもこの時間まで!」と意識して生活しているのではないだろうか?


 そんな時間に縛られる乙女を、わたしは「シンデレラ」と呼んでいる。十二時の鐘が鳴れば去っていかなくてはならないのだから……。


 先日、若き同僚がデートの日だから定時に、できれば一秒でも早く帰宅したいと言ったので、「今日の貴方はシンデレラなのね」と返したら、意味が通じなかった。


 シンデレラの話はに知っている。

 某大型リゾートの話でしょうと。カボチャの馬車で、お城があって、ドレスを着て、ガラスの靴で。ああ、ブルートパーズの色がイメージカラーで。幾らでも出てくる乙女のシンボル。


 うんうん。


 十二時? 何それ?


 興味が薄い若い人の認識はそんなものなのか?


 桃太郎の話は知っている。浦島太郎も知っている。えっ? 歌があるって? あぁ、大手携帯系会社の浦ちゃんの歌ね。


 ここでわたしにハテナが浮かぶ。


 金太郎はもはやCMの人で、ツルの恩返しも舌切り雀も知らない若者の方が多いのかもしれない。( 悲しいことに我が愛すべき子らも知らなかった)


 ならばこうして無い知恵を絞ってくだらない仕掛けを書き続ける母の行いは届かないのかもしれない。ドキドキ。


 まぁ小説は趣味の世界。アドベントなんてお祭りしたい、盛り上がりたいわたしの自己満足と承知してはいるけれど。

 いいえ、賢明な読者様はきっとわかってくれていると今日もせっせとスマートフォンをぽちぽちする。


 リアルで会うことが叶わない貴方だからこそ、ありがとうのダースローズ十二本のバラを贈りたい。


 これからも互いに繋がっていただきたい。


 12月12日

  あといちダース日のクリスマスに乙女の夢をのせて。


 

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