20 リースに込めた願い  12月5日


 リースを作ろう。


 山道を歩く息が白い。よく見れば所々霜が降りている。いつもは忙しく仕事に出かけるが、たまの平日休みだからだと、ちょっと早くに起きて散歩に出た。


 パキパキと踏みしめた木枝が湿気った音を出す。それが面白くて歩き続ければコロコロと転がった松ぼっくりが手に入った。

 そういえば、昔、アサガオのツルを丸めてリースを作ったっけ。そう思い出して、スマホをググってみた。幾つも出てくる煌びやかなリース。


 常緑樹の葉と小枝。松ぼっくりに、あら、ドングリも帽子もあるのね。ガサゴソとコートを弄れば、いつか使っただろう大判のハンカチが見つかり、不精もいいものだとふふと声を弾ませた。拾った材料を包んで大事に持ち帰る。


 家に帰れば早速洗いーーーーどんぐりは凍らせた方がいいのかしら……? ううん、20日程のことだからと洗うだけにしよう。ああ、でも、やっぱり虫はゴメンだわ。ちょっとだけ煮ることにした。


 でも星だけは豪華に!


 陽が高くなったのを見計らって車を出す。目指すは均一のお店。


 シトリンのような黄水晶の色にちょっと惹かれて、だけど自然のものには合わないかもと戻しては考える。結局手に取ったのはベタなクリスマスカラーのリボンだった。土台も買ってしまった。

 無料でーーの計画が破綻していることに気付いたのは、幾つも転がった空のボンドと歪なリースの完成の時。


 込めた願いは

ーーーーいつまでもニコニコ、みんなが笑って暮らせますように。


 きっと聖夜はダイヤモンドのように煌めいた星々が五つの尖った羽を広げて楽しませてくれるのだから。この願いは堅実なのだよ。むふふふふ。


 今日は12月5日。ゴールまで遠いなぁ。と考えながら、突貫工作の後片付けを一人した。

 

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