22 ーーやられた! 12月3日
ーーやられた!
憧れのマイホーム。田舎暮らしを選んだのは、ただ夫の実家が近いだけではない。まだ世の中が緩い頃、野焼きという文化が許されていた頃だ。
憧れだった七輪を手に取り、義母に習って秋刀魚を焼く。ジュワジュワと吹き出す脂にごくりと喉を鳴らし、パチパチと香ばしく色づく皮に塩が浮かべば口の中が潤いで満たされる。
隣に置いた古椅子に行儀悪くも冷えた日本酒。昼間っからのこんな姿は、互いに夫には見せられないと笑い合った。
ジリジリジリと黒電話がなり、ワンワンキューンと犬が吠える。
ああ、なんということだろう。
ほんのちょっと、本当にちょっとの油断の田舎暮らし。
まさか、あのアニメのようにドラネコに取られるなんて! ここらのボスだろう黒ぶちのアイツ。
まあ、こんな日もあるわよと、亡き義母と見つめ合った思い出はセピア色の白珊瑚のように、いつまでも美しくあり続ける。
12月3日
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