第4話
「ん…」
いつの間にか寝ていたらしい。軽く伸びをしてから時刻を確認しようとスマホを取り出す。
「……メッセージ…」
時刻を確認すると共に目に入ったのはメッセージの受信を知らせるバナー。仕事の連絡だったら嫌だな、と思いながら開く。
『今更遅いですか?』
メッセージの送り主は空だった。
思わず体が強張る。
どういう意図でなんで今。
疑問なんて尽きることなくどんどん溢れてくる。
返信できずにいると続いてメッセージが送られてきた。
『待たせてごめんなさい』
『ちゃんとケリをつけてきたかった』
「……今更、遅い…」
いつの間にか頬を伝っていた涙はそのまま落ちる。
拭う余裕なんてなく、ただただスマホの画面を見つめる。
「遅いから…直接、言いに来なさいよ馬鹿」
「うん、だから会いに来た」
後ろから聞こえた声は私が焦がれていた彼の声だった。
怖くて振り向けない。
これで彼がいなかったら私は立ち直れない。
いよいよ幻聴だなんて笑えない。
「麗」
足音と共に声が近づいてくる。
そしてそれは私の真後ろで止まった。
「僕たち付き合ってるんじゃないの?」
「……3年も失踪してた薄情な恋人なんて知らない」
「あははっ、それを言われたら何も言えないよ」
床に落ちていた雑誌を拾いながら床を見ると影が見えた。
彼だ。空が私のすぐそばにいる。
その事実にどういう感情を持つべきかもう分からない。
「麗」
「……」
「うらら」
「……」
「泣かないで」
まるで待てと命じられている犬のように彼は言葉をかけるだけで私に触れてこない。
近くにいるはずなのに遠くに感じる。
「…泣いてない」
「……あのさ、麗」
妙に緊張した声が後ろから聞こえる。
「あの時のお礼、もう遅い?」
『お礼は必ずします』
メモに残されたあのことを言っているのだと嫌でもわかった。
それに気づいて反射で振り返ると涙をボロボロと溢しながらへにゃりと笑う空と目が合った。
「あんたさ、いつからそんな静かに泣けるようになっちゃったのよ」
腕を目一杯伸ばして彼にハグを強請れば待っていたかのように腕に飛び込まれる。
「僕頑張ったんだよ」
ぐりぐりと頭を押し付けてくる空に応えるように私も彼を抱きしめる力を強める。
「麗とちゃんと付き合うために逃げてたことに向き合ってきた。ちゃんと終わらせてきた」
「…ありがとう」
深いことは何も聞かない。
彼が私のために何かと戦ってくれたのだ。
それだけで充分ではないか。
「お礼って何してくれるの?」
私の純粋な疑問に彼は小さく息を吸ってから答えた。
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