第14話 ノートの秘密

「あたしは監査官なの。任務があれば特別に、短い時間だけこちらと行き来できる」


 リンナさんも、あたしの疑問にさらりと言った。


「普段は旅の歌手なんだけど。旅をしながらこっちの世界と元の世界の〈交換〉を観察して、必要な処置をとるのが仕事なの。

 今はキドハシさんといっしょに大きな役目を務めることになってね」

「先輩、あなたと旅を?」


 矢口が前のめりになるとリンナさん、優しく笑って話してくれた。


 城戸橋先輩は、ずいぶん前にあちらの異世界に出現した〈提琴〉(バイオリンのことね)を弾くために何かと〈交換〉となったらしい。


「彼女が弾くと、病気や怪我が治ることがわかったのよ。きっとその〈福〉のために起こった〈交換〉だったのね」


 あたしたちは、ぽかんとしていた。


「それで彼女、とても忙しいの。毎日そのために演奏をしていてね」

「こちらに戻って来られないんですか?」

「時が来れば、そんなことにもなると思うけれど……」


 濁された上に、リンナさん、とんでもないことを振ってきた。


「ところで〈ノート〉、こちらの世界に落ちてこなかった?」

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