第13話 そんなことだろうと思ってた。
「そんなことだろうと思っていたんですよー」
北さんと滝川さんが、二人でうなずいている。
「だって~、中等部からずっといる滝川さんも聞いたことないって言うんですもん。神坂って名前の先輩」
「あなたたちだけ、どうしてか記憶が書き換えられなかったのよねえ」
神坂先輩、聞き捨てならないことを言いながら肩をすくめるのだ。
「しかも、寮の秘密まであっさりわかっちゃうなんて」
え、これまでの話、当たりだった、ってこと?
「でも、入口あるんですか? それはこれから見つけられたら見つける予定だったんですけど」
滝川さんなにそれ、あたし聞いてない。
「まあ、入口は天井裏だけじゃないんだけどね。
それにしても大したものだわ、この五月の連休までによく調べました」
「で、どうなってるの?」
矢口が堂々タメ口で割り込むから驚かされる。
「なんか、城戸橋先輩のこととか、知ってそうじゃないですか」
「まあまあ」
あわてないで、と神坂先輩は言う。
「この鈴蘭寮は、とある異世界とつながっていて、ときどき入口が開いて〈交換〉がされるの。ものがなくなったりするのはそのせい。
これもね、こっちではただの制服だけど、あちらでは〈福〉をもたらしてくれるの。さっきの跳躍力とかね。
でも、こっちのものがなくなったら、その代わりに異世界から何かが来てもいるのよ。例えば私とか」
「神坂先輩がこっちに来る代わりに、城戸橋先輩がそっちに行っちゃった、ってことですか?」
「ううん。私はこの制服の代わり」
リンナさんが着てる〈幸田ミナミ〉先輩の制服。
「制服なくなったの、ずいぶん前の話じゃないですか? 神坂先輩が急に〈先輩〉として紹介されたの、最近ですよね?」
滝川さんが、いぶかしげだ。
「行き来の時期が同じとは限らないのよ」
セカイの仕組みみたいな話、手に負えるのかな、あたしたち。
あたしも訊きたいことがある。
「じゃあ、そちらのリンナさんは? 何かの交換なんですか?」
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