第12話 神坂先輩の秘密

「神坂先輩」


 顔をのぞかせたのは、神坂先輩だった。


「あら? まだいたの?」

「まだ、って?」

「とっくに入口見つけて、出かけたんだと思ってた。異世界のほうに」


 ええええええ?!


「先輩、なんでそんなことを? そして寮のお留守番は?」

「鍵を全部閉めてきた。

 大丈夫よ。何かあったら警備会社に連絡入るし」

「そんなものかなあ」

「こんなコンビニもないようなところに、厳重過ぎるくらいよ。

 昔、制服一式なくなった生徒がいて。それからよ、留守番にやかましくなったの。ちょっと有名な生徒だったから、ストーカーとか危険な可能性がいろいろ考えられたのね、きっと」


 制服一式。

 みんな、頭に浮かんだことがあったけど、言わなかった。

 先輩は脚立を上ってくる。


「来て」


 もう一人いるの?


「こんにちは」


 ひょっこりと顔が出てきて、そのままひょい、っと両手をついて上がってきた。

 赤毛のツインテール。


「リンナさんよ」


 何でもないように紹介されたけど、この人、今、脚立使わなかったよね?

 ぽーん、と飛び上がってきたよね。特撮か?


「この服から〈福〉をいただいて、こんな風に跳べるんです」


 フク?

 着てる制服はうちのだけど。

 こんな子、みたことないな。転校生かな。


「〈幸田ミナミ〉?」


 名札には、そうある。

 リンナ、って名乗ってたよね?


「そう書いてあるんですってね。私は読めないけど」


 読めない?


「リンナさんはね、異世界から来たの」


 隣の県から来たみたいな口ぶりで先輩は言うじゃないの。


「私もだけどね」


 ………はい?

 見れば北さんと滝川さんが、ものすごくめんどくさそうな顔をしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る