第22話 2024/03/13 一進一退

 前回は水が飲めるという話を書いたのだが、以後はやはり一進一退、体調によって飲める日と飲めない日がある。今日はあまり飲めない日。だがコーヒーは一杯だけ飲めた。コーヒーと言ってもインスタントのカフェインレスではあるが。


 そんなコーヒーを飲んだのは夕食のとき。今日はレトルトカレーに食パンという変則カレーパン。まあ相変わらず味はわからないのだから何だっていい、と思って食べてみたら口の中がヒリヒリする。以前刺身を食べたときにはワサビの刺激を感じなかったのに、今日はカレーのスパイスを強く感じた。


 特別に辛いカレーではない。トップバリュのレトルトの中辛である。元々は辛さには結構強い方で、大抵のカレーの辛口は大丈夫だったのに、今日は中辛にビックリしてしまった。口内炎にしみた部分はもちろんあるものの、舌も辛さを感じている。舌の機能が回復しつつあるのかも知れない。


 思えば抗ガン剤と放射線の併用治療が終わって二週間ほどが過ぎている。ボチボチと副作用が穏やかになったり肌の黒ずみが落ちたりし始めているのだ、味覚障害が治る兆しを見せても不思議ではない。とは言えまだ便秘は続いているし吐き気もある。あまり楽観的になるのも軽率ではあろう。


 そんな副作用とにらめっこを続けているような毎日、相も変わらずYouTubeで時間を潰している。すると今日はアニメ『宇宙よりも遠い場所』の関連動画に目が留まった。2018年、もう六年も前の作品になるのだな。月日の経つのは早い。ただ、この作品は現在NHKのEテレで土曜日夕方から絶賛放送中である。次回は11話。あの「ざけんなよ」の回、リアタイ視聴はできないかも知れないが録画予約は万全だ。号泣する準備はしておきたい。


 話を戻すと、YouTubeで見た『宇宙よりも遠い場所』の関連動画の一つに、こんな話題があった。内外で評価が極めて高いこの作品だが、当然批判もある。その中に主人公たちの行動の理由付けが弱い、というものがあったそうだ。これにはちょっと驚いてしまった。


 作品を見た方ならご存知だろうが、この作品に超人は出て来ない。天才もいない。ごく普通の女子高生たちが南極を目指すという青春冒険ストーリーである。果たして普通の人間が何か行動を起こすとき、強い理由が必要だろうか。自分自身の過去を振り返ってみても、強い必要性に迫られてやむを得ず何か行動を起こさざるを得なかった経験など思いつかない。大抵はちょっとしたきっかけで軽はずみに何かを始めてしまうものではないのか。


 きっかけは小さなモノでいい。一度動き出せばそれはいつの間にやら大きな波となり、当事者としてはもう乗るしかなくなる。行動とは本来そうして生まれるものであろう。この点を考えずに「理由付けが弱い」と批判しているのは、何やかんや理由を付けて自ら行動することを拒絶している人なのではなかろうか。


 などと書いてみて、ふと今の自分を見つめ直す。もうまる二ヶ月以上、一太郎を起動させていない。毎日だらだらと無駄な時間を過ごし「副作用ガー」とお経のように唱えながらYouTubeを眺めるだけだ。自ら行動することを拒絶している。無論ある程度は仕方のない部分もあるにせよ、もうそろそろ動き始めてもいいのではないか。


 言うまでもないが、一太郎を起動させたところで書くことが思いつく訳ではない。いまのところアイデアらしいアイデアは手持ちにないのだから、結局は無駄な時間の過ごし方がちょっと変わるだけかも知れない。しかし重要なことは足掻くことだ。結果など伴わなくていい、まずは足掻いてみよう。その小さなきっかけが何かにつながることだってあるしな。

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