第17話 2024/01/27 空腹感
吐き気がある。メチャクチャ酷い吐き気ではないし我慢はできるのだが、一日中ずっと胃の辺りに居座っていてくれるおかげでストレスが半端ない。放射線治療の副作用なのだろう、日に日に体にガタが来る。
毎日毎日腹に不快感を抱えて寝転んでいると、空腹感がなくなってしまう。自分がいま腹を空かせているのかどうか、よくわからないのだ。
「朝なのだから空腹に違いない」
「朝食を摂って五時間くらい経っているのでたぶん空腹なのだろう」
「夕食は……さてどうしたものか」
毎日そんなことを考えながら食事を摂っている。体感に従うなら摂りたくないところなのだが、それでは体がすぐに参ってしまうと頭が理解しているために無理のない範囲で食事をしている。知識って大事よねと思う次第。
それでもおかゆ中心の食事なので、以前より摂取カロリーは低下しているはずだ。まあその分ずっと寝転んで運動不足にはなっているからチャラかも知れないが。おかゆに合うおかずというのがあまり思いつかない。味噌汁か漬物か卵焼きでとりあえず毎日を回している。梅干しが欲しいところだが口内炎にしみるのがわかり切っているからな、さすがにそこまで頭はボケていない。
口内炎も日に日に広がっているようだ。もう歯磨きが難しくなっている。探してみたのだが、歯周病予防のための歯磨き粉はたくさんあるのに口内炎でも使える歯磨き粉というのは見当たらなかった。ミントの成分がしみてしみて仕方ない。まだ激痛というほどではないものの、そう遠くない将来そうなるのは目に見えている。医者に相談しなくては。
味も相変わらずわからない。何となく甘味だけは感じているような気もしないではないのだが、基本的に何を食ってもほんのり甘いだけで味の判別ができない。醤油を舐めても甘いからな、始末が悪い。
それでもイロイロ食べ続けて味蕾を刺激し続ければ、いつかは味覚も戻ってくるだろうと半ば諦めの境地ではあるものの気長に構えている。四月の入院の際、リハビリも経験した。人間の体は思っているより柔軟なものだ。何とかなると思っていれば何とかなることもあるだろう。もちろん何ともならない場合もあるのだが、まあそれはそれ。
抗ガン剤治療は予定の半分を消化し、放射線治療も折り返し地点までもう少しだ。まだ後半があるというのは何ともかんとも気が重いが、とりあえずここまでは何とか来られた。後半も元気に頑張ろう! ……などという体力も気力もない。でも降参する訳にも行かないしな、ダラダラいじいじウジウジしながらでもいいからとにかく治療を続けてガンを押さえ込みたいところ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます