第7話 2023/12/19 ヤバい橋を渡る

 昨日は抗ガン剤治療の二回目。また四時間ほどかけて点滴をしてきた訳だが、体調には特に変化らしい変化もない。凍えるほど寒いし天気も悪いし気持ちも落ち込む。しかし落ち込んでいるのは気候のせいばかりではない。


 有り体に言えば金がない。今月は何とかなるが来月もガン治療を続けて行くために必要な金が用意できないのだ。これは困った。カードのキャッシング枠も一杯になるまで使っているしな。親戚にでも頭を下げて金を貸してくれるよう頼んでみようかと思ったりしたのだが、よくよく考えてみれば金を借りても返す当てがまったくない。それでは金を恵んでくれと言っているのと同じである。


 五千円やそこいらで済むのならまあそれでもいいのかも知れないが、来月はたぶん現金で十万円くらいは必要になってくるだろう。いきなり十万円の大金をくれと言われても、はいそうですかと答えられる人間はそうそういない。ネットでお金を配ってる人とかならともかく、普通はそんなこと言われても困惑するだけである。自分がその立場なら怒り出すかも知れない。


 そんな次第で金策的に追い詰められて精神的にもどうしようもなくなっていたのだが、いまは落ち着いている。何とかなる目処が付いたのだ。その方法とはズバリ、消費者金融に手を出した。いわゆるサラ金であるな。


 実のところサラ金ももっと早い段階で思いつかなかった訳ではない。ただ現代のサラ金はかつてのように誰にでも金を貸しつけて、返せないヤツは身ぐるみ剥がして、という業者ではなくなり、借入のためには審査がある。この審査に通るはずがないよな、というのが私の認識だったのだ。


 しかしいますぐ金が必要なのは事実。ダメ元で試してみるか、と二社に申し込んでみたところ、二社とも審査を通り、合計で六十万円の現金枠が確保された。これなら来月は乗り切れる。その先のことを考えても、まあ半年くらいは何とかなるのではないか。それ以上の未来はまったくもって暗中模索であるが、希望の糸はまだ切れていない。


 かなりヤバい橋を渡っている自覚はあるつもりだ。しかし金がなければガンと戦うことはできない現実。貧乏なんだから仕方ないと戦いを放棄できるほど諦めの良い人間ではないのだ、最後まで足掻くしかない。とにかくこの態勢で、一、二月を乗り越えよう。そうすればまた何かが変わるかも知れない。変わらないかもしれないのだけれど。

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