第2話 2023/12/03 終活
ガンになると、目の前に『死』がぶら下がる。もちろんそれまでも時折人生の終わりについては考えたりしていたのだが、常に目の前にぶら下がる状況というのはなかなか厄介だ。視線をどこにそらしたところで、必ずそこに『死』がある。一時たりとも忘れることができない。精神を病む人がいるのも当然と言える。
まあ私自身の精神についてはガンになる前から病んでいたので、今更どうこうなるものでもない。とは言え常に目の前に『死』があるというのは邪魔っ気で仕方ない。目障りで苛立たしいし腹立たしい。
しかし腹ばかり立てていても何も始まらない。死なない人間はいないのであるし、それが他人よりちょっと早めに来ただけだ。ならば文字通りのデッドラインがすぐ足下にまで来る前に、やっておかねばならんこともイロイロあるだろう。俗に言うところの『終活』であるな。今回はそんな話。
私はいま一軒家に住んでいるのだが、家と土地の権利書と実印はすでに身内に預けている。生命保険の証書なども一緒だ。母親が亡くなったときにこの辺の書類と印鑑関係を探し出すのにえらい苦労をしたからな、とりあえず自分が死んだときにはなるべく迷惑をかけたくない。
ガンになったこともあって借金はあっても貯金はないが、家と土地を売ればまあ借金を返せる程度の金額にはなってくれるのではないかと思っている。土地の価格が暴落したりなどしなければ、だが。葬式は必要ない。墓に入れてもらいたいとも思わない。だがまったく何もしないのも世間体があって難しいかも知れないので、その辺は生命保険で何とかなってくれと願うばかり。
ただこの生命保険がな、三年間掛け金を支払わないと死亡時の保険金が出ないのだ。現時点でまだ半年ほどしか払っていないので、保険金のためにはあと二年半は生きなければいけない計算だ。うーん、ちょっと微妙な気がする。まったく、死ぬのにも金がかかる。資本主義経済社会万歳。
それはさておき、ネットでよく見かけるネタとして、自分の死後はPCのCドライブを破壊して欲しいというのがある。自分の命日が前もってハッキリわかっているのなら事前に消去もできるのだが、なかなかそうも行かないしな。Cドライブの中身を一切見ずに破壊してくれる身内がいるなら、それに越したことはないのだろう。問題は、人間はそこまで親切な生き物ではないということだが。
まあ私はエロ関係の収集癖もあまりないので、フォルダを一つ二つ消去するだけで綺麗さっぱりである。あとはブラウザの履歴でもたどられない限り、エロ関連で特に困ったことにはならないだろう。ただ小説関係はそうも行かない。
私は転載厨なので、書いた小説は基本的に複数サイトに投稿する。こういう日記やエッセイはあまりしないのだが、それ以外の小説はほとんど転載している。完結済みの作品も、未完結の作品も。しかし現時点で未完結の長編小説は、おそらく私が生きているうちに完結するのは無理だ。忸怩たる思いはあるのだが、永遠に完結しない作品で投稿サイトのリソースを無駄食いするのは申し訳ない。なのでそういった作品を少しずつ削除し始めている。物書きとしての『終活』の始まりだ。
ウェブの投稿サイトに上げている作品はそれでいいとして、さて問題はPCに残った作品群である。自分が死んだ後、PCが処分されるのと同時に消え去ってしまう、というのが一番あり得る展開なのだが、果たしてそれでいいのかどうか。私は文豪ではないので、自分の過去作や未発表作が価値を生むとは思っていない。しかしそれでも身を削って生み出した私の分身である。闇から闇へと葬り去られても仕方ないとはなかなか考えられない。どうにかして生き延びさせることはできないだろうか。そんなことを考えるここ最近である。
と、このように個人としても物書きとしても人生を畳み始めているのだが、それでいて新しい作品を創る意欲が完全に消え失せた訳でもない。諦めが悪いなと我ながら苦笑したくなるところ。とにかく一本、最後に一本ちゃんとした長編小説を書き上げたい。そのためのアイデアをいま暖めている。これが何とか完結するくらいまでは生きていたいなと思うのだけれど、さあて、そんなに上手く事が運ぶかどうか。
今日はこんなところかな。次の更新がいつになるかは不明だが、おそらく今週中にはできるはずだ。それまでちょっとずつ終活を頑張るとしよう。それではまた。
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