つれづれガン日記
柚緒駆
第1話 2023/12/02 転移、かな?
私はガン患者である。である、と胸を張るほど偉い訳ではないのだが、なかなか砕けた文章というのを書きづらい性格をしている。なのでご容赦いただきたい。
ガンになった経緯については以下の作品に書き記してあるので、興味のある方は読んでいただけると有り難いところ。
『虫けら、ガンに遭う~令和五年口腔ガンとの遭遇の記録』
https://kakuyomu.jp/works/16817330656810502932
一度書き終わったモノを何故また改めて書き始めたのかと言えば、まあお察しの通りである。かつて左上顎奥にガッシリ巣くい、今年四月の手術で切除されたはずのガンが転移したかも知れない。今度は左下顎に腫瘍ができている。先月十一月のCTスキャンで判明した。担当医の話では血液検査の腫瘍マーカーの数値が跳ね上がったらしい。
これにはちょっとビックリした。知っている人には有名な話かも知れないが、腫瘍マーカーの数値はあまり当てにならない。一般的な、たとえば会社で行われる健康診断でも腫瘍マーカーをオプションで選択できたりするものの、健康診断で異常なしとされたにもかかわらず後にガンが見つかることは珍しくないようだ。しかし今回私の場合、ものの見事に大当たりだった。外れてくれても全然構わんのだがな。
もっとも、この腫瘍が悪性腫瘍、つまりガンであると確定された訳ではない。ガンかどうかは生体組織検査、いわゆる『生検』を経て確定される。現段階ではまだ生検は行われていないので、これがガンであると断言はできない。できないのだが、体感的にはたぶん間違いないだろう。
左顎の下あたりの首筋に傷がある。十月半ば頃に突然、血液混じりの体液が噴き出して以来、十二月に入った現在でも治っていない。傷口が塞がらないのだ。これがたとえば、元々傷口が治りにくい体質だとか、注射跡の血が止まりにくいとか、そういうことがあるなら別だが、この場所以外の傷は普通に塞がるのである。つまり部分的にマトモな状態ではないということだ。何の原因もなしにそんな異常が出るはずもあるまい。
患者である本人としてはこの時点で生検を行ってくれてもいいと思うのだけれど、病院としてはキチンと手順を踏まねばならんのだろう、昨日急遽PET-CTの検査が行われた。この検査はかかりつけの病院ではなく専用の施設を持った別の病院で行われた。この病院の規模にちょっとビックリ。と言っても建物がデカい訳ではない。
この病院は私の自宅から車で三十分ほどの場所に建っているのだが、何と送迎が出る。送迎バスではない。患者一人に対し普通車一台で自宅まで送迎が行われるのだ。当たり前だが、一日に何十人も送迎できるはずもないから完全予約制で、ロビーには多くて三人くらいしか患者がいない。受付の人数の方が常に患者より多いのである。それで成り立つのだからPET-CT専用施設という物の需要は凄いのだろうな。
PET-CTについても書いておく。CTスキャンと何が違うのかと思う方もおられるだろうが、似たような物ではある。ただしより高度な機械だ。CTスキャンがある程度限定された部位の撮影を得意とするのに対し、PET-CTは全身を、つまり頭の先からつま先までを途切れずに連続してくまなく一気に撮影できる。ガンが下顎以外にも転移していないかを確認できる訳だ。これをしておかないと、下顎の細胞だけ生検に回しても二度手間三度手間になる恐れがある。なかなか厄介な話だな。
このPET-CTの検査結果が出るのは来週。なので来週またかかりつけの病院に行かねばならない。面倒臭い。いや、面倒臭いだけなら諦めもつくが、病院に行くと金がかかるのである。これが困る。
「自分の命がかかっているというのに、何をセコいことを!」
そういう声もあるだろう。だがPET-CTを一回受けると、健康保険が適用されて三割負担で、支払いは約三万円である。CTやMRIでも数千円単位の金が飛んで行くし、抗ガン剤も数万円単位で金が出て行く。手術や入院などがあればと考えると頭がクラクラするほどだ。
もちろん高額療養費制度があるので、全額自己負担にはならない。ある程度以上は請求すれば戻ってくる。でもガン治療が一ヶ月やそこいらで終わることはないのだ。ある程度、すなわち数万円単位の出費は何ヶ月も続く。これはキツい。本当にキツい。経済的な理由でガン治療を諦める人がいるのも理解できる。
世の中には「ガン保険は無駄だ」と主張する声もあることは知っているが、そういうのはいろんな手練手管を熟知している人の話だ。大半の人はガンになったら金銭的にアップアップする。それでなくても精神的に追い詰められて頭が回らなくなるのだから、よほど経済的に余裕がないのならともかく、余裕があるならガン保険には入っておいた方がいい。
今日はこんなところかな。次回は『終活』について書こうかと思っている。それではまた。
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