第17話
「リディア様の適性魔法は植物系でしたね。まずはどんな形でもいいので見せていただけますか?」
「分かったわ」
私はどうしようか迷ったが、足に魔力を集めて魔法を発動させる。
すると地面から色とりどりの花が咲いていく。
「素晴らしい精度ですね」
「ありがとう。こんな感じでいいかしら?」
アランが頷いたのを見て魔法を止める。
今日は魔力は回収しないため、魔法を止めても花は咲き続けている。
「リディア様の魔法は瞬発性がある反面、魔力消費が大きいですね」
大きな狐耳を細かく動かしながらアランはそう言った。
今の魔法から私の魔力の流れを聞き取ったのだろう。
「そういえば、幼い頃は魔力切れで倒れることも多かったわ」
魔力は体力と同じように、扱う人間によって器量が違う。
だから使いすぎると大量不良だけでなく、意識を失ったり寝込んだりすることがある。
まだ魔法に慣れていなかった頃はよく倒れていたものだ。
「きっと干渉する技術が優れているからこそ、魔力を持っていかれやすいのでしょう」
「でも今は魔法の使い過ぎで倒れることはないわよ?」
「それはリディア様の魔力の器量が多数派と比べると桁違いだからです」
しかし魔力の器量を増やす訓練なんてした覚えがないし、そもそも魔力の器量は生まれた時にほとんど確定してしまう。
私の持っている知識とアランの言っていることが上手く噛み合わず、首を傾げる。
そんな私の様子を見てアランはすぐに言葉を続けた。
「人間は普通に生活しているだけならば本来の能力を開花させないまま一生を終えます。しかし、時にそのリミッターが外れることがあるのです」
アランはそこで言葉を切ってから真剣な表情で続けた。
「昨夜、過去のお話を聞いて分かりました。きっとリディア様のリミッターは誘拐事件の時に外れたのだと思います」
その言葉を聞いて、思わず息を呑んだ。
確かにあの時の私は何かおかしかった。
いつもならすぐに魔力切れを起こして倒れてしまうのに、あの時は魔法を使い続けることができた。
「たしかにあの時から魔力切れを起こしていないわ…」
何となく自身の手の平を見つめてしまう。
それをどう捉えたのか、アランは辛そうにこちらを見た。
「お伝えすべきか迷いましたが、魔法を扱う上で知識は大切ですので…申し訳ありません」
「…ううん、いいの」
私のために考えてくれた結果なのだ。
それに、
「あの時の恐怖が無駄にならなくて良かった。あれで強くなれたのなら儲けものだわ」
「……本当にお強い方だ」
アランは私の顔を見ると目を細めながら小さく微笑んでくれた。
「では、今度は魔力を抑えながら魔法を使う方法を学びましょうか」
「分かったわ」
魔法の授業は適度に休憩を挟みながら1日かけて行われた。
魔力の調整が上達した頃には、庭一面が花で埋め尽くされていた。
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