LEVEL.17 固有ギフト




“連続殺人鬼”との遭遇についてラヴィが、レヴァンとシュヴァートに報告へと出向いている頃。

誰も使っていない会議室で、ロゼッタはカルマに問い詰められていた。



あの時。



【アイツは、アイツは、俺をっ】


【俺は、何もしてないっ】


【妻が、……誰か、妻を助けて、くれっ】


【この奥に、逃げ込んだっ……アイツも、追いかけてっ】



“浮遊“霊”の男性”はロゼッタの視線に気付いては、ロゼッタに近寄りロゼッタのスカートを掴んでは悲願を伝えていた。



「っ……」


【どうかっ、どうか“視えて”いるなら妻を……助けてくれっ!“連続殺人鬼”に、殺されてしまう!!お腹の中には、赤ん坊が居るんだっ!!頼むっ!!】


「カルマ、さん……」


「どうしたん?」


「まだ、奥に“女の人”が……誰かに追われてます!!」


「何やってっ!?」


「早く助けないとっ、“女の人”のお腹には“赤ん坊”が居ます!!」


「っ~、“なんで分かった”のか、後で教えてもらうで!?」


「はいっ」



と、ロゼッタは咄嗟に返事を返してしまっていた。



「なぁ、なんで“分かった”んや?」


「え、えっとですねー……」



ロゼッタは自分の不思議な体質について話をすると、カルマは前の大会の時のロゼッタの事を思い出していた。


確かに、“あの時”のロゼッタは“ロゼッタではない何かを“感じていた””のは確かだったからだ。



「そうなんやな、だから“変な感覚”があったわけや……」


「“変な感覚”??」


「おう、まぁー……これは俺の“固有ギフト”のせいだから気にせんといて」


「あ、うん??」


「多分やけど、ロゼッタの“それ”はロゼッタの“固有ギフト”だと思うで?」


「“固有ギフト”……」



“固有ギフト”というのは、生まれつきで稀に“特殊なギフト”がフラグメントに植え付けられている人が持つ特殊な能力の事である。


フラグメントというのは、簡単に言うと遺伝子のようなモノなのだが血などに宿るモノではなく魂に刻まれた“情報”の事をフラグメントと言われている。

フラグメントに異常をきたせば、それは“異変”となって“異径の魔物”へと変わってしまう。



「ただ、その感じだと………なんというか、“未完成”って感じやな」


「“未完成”?」


「“固有ギフト”ってのは、最初は中途半端な“未完成”として開花するんやけどな?今のロゼッタは、“未完成”の中の中って感じで安定しておらんのかも知れへんわ」


「へぇー」


「まぁ、専門的な事を知っているのは……シャルル先生やな!アイツなら、“ギフト”についてというよりフラグメントに関する事を知っておるやろ」


「あ、医者だから?」


「おう!って、入ってきたやん……シャルル先生」



カルマの会話にスルッと入ってきたシャルルは、扉の方で煙草を吸いながら立っては優しく笑みを浮かべては軽く手を振っていた。



「いや、なんかカルマが珍しく“ギフト”やら“フラグメント”の話をしていたから気になってねぇ」


「悪かったな、珍しくて」


「“フラグメント”ってのは、ロゼッタちゃん?その人の“存在証明”って、簡単に片付けられるようなモノでねー……其処に、異物のように“固有ギフト”があるようなモノなんだよ」


「い、異物?」


「“固有ギフト”ってのは、開花をしなければ“ただの異物”であり“異径の魔物”へと変えてしまう可能性もある危険な存在でね」



本来のフラグメントには“固有ギフト”のようなモノは存在してはおらず、それは“異変の胤”とも言える“まさしく異物である”。



「でも、この“固有ギフト”を欲しがる国もいるんだよねぇ」


「あー、“共和国”と“皇国”だろ?彼処は、色々と怪しすぎるってシュヴァートもレヴァンさんも言ってたし」


「欲しがる国って、あるんだね」


「そりゃーね?普通の“ギフト”と違って、チートのような能力だから喉から手が出る程に欲しいって思うでしょ」


「ち、チート……」


「あ、ロゼッタちゃん」



ロゼッタとカルマそれにシャルルが話をしていると、レイヴンがシャルルの後ろから中の様子を眺めてはロゼッタを見つけると声をかけてくる。



「レイヴンさん?」


「レイヴンさんじゃん」


「どうしたんや、レイヴンさん?」


「いやー、話し声が聞こえたってのもあるんだけど……“連続殺人鬼”と出くわしたって聞いたから大丈夫だったのかと思ってさ」


「あ、はい!カルマさん、それにラヴィさんにも助けられたので!この通りっ!」


「お!ラヴィちゃんに会ったんだな?早いな、流石ラヴィちゃんだな!いやー、ラヴィちゃんが来ていたなら大丈夫だな!」



レイヴンは満面な笑みを浮かべながらも、ロゼッタの頭を優しく撫でてからチラッとカルマを見れば少し気まずそうなカルマの表情を見る。



「カルマも、頑張ったんだろ?“アレ”を使いたくないってのは、前から知っていた事だから気にすんな」


「お、おう……」


「いずれ、また“連続殺人鬼”との邂逅もあるだろうし……その時には、全力で戦え」


「へ?」


「ロゼッタの嬢ちゃんなら、お前の“ソレ”について怖がったりしないって話だ」


「そ、そうなんやろうか……」


「おう、この“オレ”が保証してやる」



カルマは不安そうな表情をしながらも、シャルルと話をしているロゼッタを見つめていた。



(嫌われたく、ないんや……)


(俺はっ…)





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