LEVEL.18 収穫祭1日目




本日は、待ちにまった“収穫祭”。



ギルド国家の都市では“収穫祭”を祝うため沢山の飾りが施されており、収穫物や工芸品などを売っている国民達で賑わっていた。



「え、私に護衛ですか?」


「うん、そりゃあ昨日の今日だからね」



出掛けようとしていたロゼッタは、レヴァンに呼ばれてレヴァンの執務室に来て話を聞いていた所だった。

どうやら街に出かけるならば“護衛”で誰か一人でもいいから連れいくように、レヴァンからの提案というよりも“お願い”の話だった。



「それで、ね?今の時間で空いているのが、ラヴィだったからラヴィに頼んであるから」


「ラヴィさん?」


「ふふっ、ラヴィならロゼッタちゃんを護るぐらいは余裕だと思うし……何よりも、帰ってきて直ぐに任務って頼むわけにはいかないから数日の休暇も兼ねて、ね?」


「なるほど?」


「おーい、ラヴィー?」



レヴァンは隣の部屋に居るラヴィを大きな声で呼べば、隣の部屋に続く扉が開くとラヴィが少し眠そうにしながらもレヴァンの執務室に入ってくる。



「何ですかー」


「今日から“収穫祭”だから、ロゼッタちゃんの護衛を頼めるかい?」


「あぁ、そういえば“収穫祭”でしたっけ?まぁ、休暇を数日貰いましたから大丈夫ですけど」


「じゃあ、今日の夕方頃合いまでロゼッタちゃんの事を頼んだよ?」


「あ、はい」



レヴァンの執務室から出ていくロゼッタとラヴィは、本部を出ては大通りにある市場へと出向いては様々な出店を眺めていた。



「そういえば、ラヴィさんって“討伐士”の所属なんですよね?」


「うん、そうだよ」


「“討伐士”の任務って、どんな内容が多いんですか?」



ロゼッタの問いにラヴィは少し考えながらも、どう説明をしようか話をまとめてからロゼッタに“討伐士”について説明をする。


 

「そうだねー、主に魔物や幻獣などの討伐が多いんだけど……それぞれランクが、付けられていてね?自分の実力に見合ったランクの討伐を皆で振り分けているんだ」


「例えば、フランくんとリカルドそれにシイナちゃん達なら“AAランク”に振り分けてある魔物や幻獣の保護を行ってる」


「その上のランクが“Sランク”で、その辺りはレヴァンさんとレイヴンさんが担当しているね」


「俺?俺は、“SSランク”もしくは“規格外ランク”をこなしているけど……この辺りは、完全に幻獣の中でも危険な幻獣の討伐が振り分けられているね」



ラヴィが苦笑いを浮かべながらも説明すると、ロゼッタは驚いた表情をしては“ラヴィさんって、とんでもない討伐士さんだったんだね…”と小さく呟いていた。



「でもね、俺より本当に凄い人はいるけど……基本的には、本気を出さない人だけど俺達に何かあれば“マジギレ”で本気を出してくれる」


「え、誰なんですか?」


「ふふっ、それは秘密」


「えー!?」


「ほら、折角の“収穫祭”なんだから楽しまないとね?何か食べたいのあるかい?今日は、俺が奢るよ」


「え!?」



ラヴィは優しく笑みを浮かべ周りの出店を見ては、丁度“串焼き屋”を見つけては目を輝かせながらロゼッタの左手を掴んで歩いていく。



「……串焼き屋?」


「ここの串焼き屋の串焼きってね、他の国と違って大きくてボリュームもあるんだ」


(そういえば、お店とかで忙しくて“収穫祭”なんて巡ったり出来なかったなぁ……)


「おじさん、“モノノムの串焼き”を2本頼むよ!」


「おう、待ってな!いつも、来てくれるなラヴィの坊っちゃん!」


「ここの串焼き好きなんで」


「嬉しい事を言ってくれるな!オマケに、1本つけてやんよ!」


「ありがとう、おじさん」



ラヴィは串焼き屋のおじさんから豚肉の分厚いロースに似たモノが串に刺さった串を3本受け取り、その1本を優しく笑みを浮かべながらもロゼッタへと差し出す。



「“モノノムの串焼き”、これって“豚”と同じなんだけど風味は“牛”に似ているせいかボリュームがあるんだ」


「“モノノムの串焼き”?」


「食べてみて?」



ラヴィに言われてロゼッタは軽く首を傾げながらも、手に持っているの豚肉の分厚いロースのようなモノを口に含んで噛み千切る。



(もぐもぐ)


「っ!?本当だっ、見た目は豚肉と同じなのに!?」


「ふふっ、不思議でしょ?ちなみに、“モノノム”ってのは“イノシシみたいな魔物”でね?北側の産地農場で飼育されている“家畜の魔物”なんだよ」


「えっ!?」


「リカルドが色々と考えて、“モノノムの害”をどうにかした結果が“家畜化して食糧”にも出来るようにしたってのが正解かな?」


「凄いなぁ、リカルドさん」



一時期“北側の産地農場”では、イノシシみたいな魔物でもある“モノノム”の被害が多くて“寒い土地”の作物が育てられなくて、確かにピンチになっていた時があった。


どうやら、その問題はリカルドの提案が上手くいった事で解決したようである。



「さて、次は何を食べる?他にも、変わったモノとかあるから試しに食べてみるかい?」


「はいっ!」


「ふふっ」



夕方近くまでロゼッタは、ラヴィと共に“収穫祭”の1日目を楽しんだ。



(“収穫祭”って、こんなに楽しいし美味しいものも沢山あったんだっ……)


(それを考えたら、数年は無駄にしていたって事??)






NEXT

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る