LEVEL.4 騎士の老兵さん、ありがとう




待合室へと戻ってきたロゼッタは、ソファに座っては此方へと手を振っている嘴マスクの青年が居るのを確認する。



「おっ疲れ~!頑張ったやん」


「あー、まぁ………うん」



ロゼッタが嘴マスクの青年の傍まで来ると、嘴マスクの青年はロゼッタの頭を優しく撫でては笑みを浮かべる。



「なんか、恥ずかしいんですけど」


「んー?頑張ったから御褒美だぜ?」


「それは、そうだけど……」



待合室の扉を開けてはシキが入ってくると、嘴マスクの青年は目線だけシキの方を見ては目を細めている。



「カルマさん、そろそろ第1試合っすよ」


「あ!もう、そんな時間なんか!?んじゃあ、行ってくるわ!」


(“カルマ”って……)


「そうや!終わったら、お嬢ちゃんも俺の頭を撫でてや!絶対やぞ!それと、名前も教えてなっ!」


「えっ!?ちょっ、ちょっと!?」



カルマが満面な笑みを浮かべて待機室へと走っていくと、ロゼッタは唖然とした表情をしては固まっていた。



「何、そこでボーっとしてんっすか」


「え、あ、いや……カルマさんって、“自警団ギルド”の“最高戦力”で有名な人です、よね??」


「あー、そういえばー………そうっすね」



ロゼッタは“とんでもない人”が武道大会に参加している時点で、この武道大会の優勝者なんて居ないのでは?と考えが過っていた。


というよりも、本当に終わったらカルマの頭を撫ぜないといけないのだろうか?



「終わったみたいっすよ」


「えっ」



待機室から勢いよく出てきたカルマは満面な笑みを浮かべては、ロゼッタの側へと駆け寄ってきては軽くしゃがむとロゼッタへと頭を差し出してくる。



「俺、頑張って“半殺し”だけにしてきたで!褒めてーやっ」


「あ、はい」


(それって、普段は殺して……)



ロゼッタは身震いを感じながらも、目の前で頭を差し出しているカルマの頭を優しく撫でるとカルマは嬉しそうな表情をしている。


そんな場面を眺めていたシキは、凄く珍しいモノを見たかのように少し驚いた表情をしてはカルマとロゼッタの様子を眺めている。



(珍しい、あのカルマさんが他人に触られて嬉しそうにしているなんて……)


(明日には、槍が空から降ってきたりするんじゃないんっすかね?)


「そろそろ、出番っすよ?」


「え、あ、はい!」



シキがロゼッタに声を掛ければ、ロゼッタの側へと騎士の老兵の霊が側へとやってきてはロゼッタの中へと入って消え去る。



「頑張れよ、嬢ちゃん!」


「あ、はい!程々に、頑張ります!」



ロゼッタが立ち去ったあとに、シキは煙草を取り出しては吸い始めるとカルマは嫌そうな顔をしながらもシキの方へと来ては見えない速さのダガーで煙草の先端を切り落とす。



「忘れていたっすわ、嫌煙って事を」


「忘れていたなんて、ワザとやろ?何の嫌味のつもりだよ」


「んー、宣戦布告?」


「はぁ?意味がわからねぇーっての」


「ははっ、気付いていないなら別にいいっすよ?その分、こっちには利があるってもんっすわぁ~」



シキとカルマが睨み合いをしている頃、ロゼッタは第二試合の相手となる槍の騎士のような格好をした好青年と戦闘を開始していたのだが、ロゼッタへと“憑依”をしている騎士の老兵が軽々と交わしては一撃で槍の騎士のような格好をした好青年をダウンさせていた。



【お嬢さんのおかげで、最期を楽しめました……ありがとうございます】


「え、あっ」


【大丈夫ですよ、お嬢さんには沢山の味方がついて今にも手伝ってくれると思います】



騎士の老兵は優しく笑みを浮かべてから、ロゼッタの中から出てはロゼッタの頭を優しく撫でてから光の粒子となり空高くへと消え去っていく。



「……そっか、楽しめたなら良いや!うんっ」



ロゼッタが待機室へと戻ってくるとロゼッタへと駆け寄ってきたのは、嬉しそな表情をしているカルマである。



「第2試合突破、おめでとう!嬢ちゃん!」


「いやいや、……偶然ですって」


(騎士のおじさんが、2回戦頑張ってからなたけだし……アタシは、何もしていないし)



ロゼッタが複雑な心境を抱いていると、カルマは何かを思いついたのかロゼッタの手を掴んで歩き始める。



「え、あ、あのっ!?」


「気晴らしや、気晴らし!2回も戦ったわけなんだから、ちょっとは気晴らしは必要だろ?それに、もう昼時だし!」


「あのー、弁当持ってきてないんですけど」


「大丈夫、大丈夫!知り合いに、持ってこさせる!」


(ごめんなさい、その知り合いの人っ……パシリのような事を……)



ロゼッタは心の中で見ず知らずの“知り合い”にあやまっていると、どうやら屋上にある庭園へと到着したのか綺麗な桜のような花の一本樹と共にネモフィラの花が咲き乱れていた。



「どうや、綺麗な所だろ?」


「う、うん……凄く、綺麗……」


「この樹な?ずっと前から存在していて、ギルド長が可哀想だから囲むように建物を建てようって事で此処にあるままなんだ」


「そうなんだ……、大切にされているんだね」


「おう!毎日、ちゃんと世話もしては周りも綺麗にしているんたぜ?」



カルマはロゼッタを連れて庭園にある“お茶会の間”ともなっている所へと案内すると、其処には既にシキが食事をテーブルに乗せているのが見えてくる。



「あ、案内の人!」


「さっき振りっす?んで、カルマさん俺をパシリにするの止めてくれないっすか?仕事中に」


「いいじゃん、昼時だし」


「まったく………」










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