(十八)

雲の世界 三十二日目

とうとう三人が帰ってしまいました。すごくさびしいですが、いつか私が覚えて帰った時に、たくさん思い出話が出来たらなと思います。電車が見えなくなるまで手を振りました。思いが届いていたらいいなと思います。


雲の世界 三十三日目

今日からまた、『海』の情報集めと『雲』の世界を楽しむ期間が始まります。すごく楽しみです。秋の旅館の図書館はもう調べたので、今度は春の旅館の図書館を調べました。なかなかめぼしい情報は見つかりませんでしたが、毎日コツコツ探して、何とかたどり着けたらいいなと思います。


雲の世界 三十四日目

今日、太宰治の『人間失格』を読み終えました。少し難しかったけど面白かったです。お兄さんによると、太宰治は『イロオトコ』なのだそうです。意味はちょっとむずかしくてよく分からないけれど、お姉さんがおこっていたからあまり良くない意味なのだと思います。いつか知った時に、ああこういう意味かとなるのが楽しみです。


雲の世界 三十五日目

今日は夏の旅館の図書館へ行きました。半分くらい調べたけれど、『海』の情報が書いてある本は見つかりませんでした。明日もがんばって探したいです。

図書館を探し終えたあと、おかみさんに『海』について聞きました。でも、『雲』の反対側にあるとか、電車で行けるとかそういうことしか情報は手に入れられませんでした。コツコツ探すしかないと思います。


雲の世界 三十六日目

今日もまた夏の旅館を探しましたが見つかりませんでした。夏の旅館はひかく的小さめなので探すのにあまり時間はかかりませんでした。少し残念ですが、まだ冬の旅館が残っているので落ちこみすぎないようにします。お兄さんは少しいらいらしていたけれど、お姉さんが作ったレモンパイを食べるとすっかり上きげんになりました。お兄さんも私も、お姉さんが練習したレモンパイを食べるのが大好きです。


雲の世界 三十七日目

今日は冬の旅館の図書館を調べました。やっと『海』の情報が書いてある本を見つけることが出来ました。すごく古い本で、ページがところどころやぶけたり虫食いにあったりしていてとても読みづらかったし、何より英語で書いてあったので何が何だかさっぱりでした。お姉さんとお兄さんが一緒に解読した結果(と言ってもほとんどお姉さんでしたが)、『海』という世界はあれたまちで、今はもう誰も住んでおらず、ふしぎな動物達だけが住んでいる世界なのだそうです。少し怖いところらしいですが、新しい世界に行くという意味ではとてもワクワクします。いよいよ明後日には出発です。明日はじゅんびに取りかかります。


雲の世界 三十八日目

今日は『海』の世界に行くためのじゅんびをしました。お兄さんがお姉さんに「薬忘れるなよ」と言っていました。お姉さん、まだ体調悪いのかな。少し心配です。でも、いざとなればお兄さんもいるので安心だと思います。私も一応ぜんそくの薬を持っていきます。お兄さん達は多分知らないと思うけれど言うタイミングものがしてしまったので仕方がありません。多分今までも発作はなかったので『海』でも大丈夫だと思います。明日がとても楽しみで、でも少し怖いです。おやすみなさい。

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