(十七)
今度もまた、海に行くまでの二週間を陽菜ちゃんの日記から引用することにする。
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雲の世界 二十五日目
今日は雨が降ってきました。この世界に来て初めての雨だったので、いつもはゆううつな雨が今日は何だかワクワクするものになりました。それに、雨音と旅館の景色が相まって、すごく小説のこうせいを考えるのがはかどりました。いつかもう少し完成したらお姉さんにも見せたいなと思います。お姉さんはあまり体調が良くないようで、今日は一日ゆっくりすごしていました。お兄さんはお姉さんのかんびょうをした後に図書館に行っていました。『海』の世界について調べに行ったのだと思います。早くお姉さんの体調が良くなるようにとねがっています。
雲の世界 二十六日目
昨日から雨はずっとふり続いています。止む気配がありません。お姉さんの体調のためにも、早く止んでくれたらいいのにと思います。お兄さんがお姉さんのかんびょうをしているので、私もお白湯を入れる練習をしました。お姉さんは体調が悪いのにお白湯という漢字を教えてくれました。とてもやさしいです。お姉さんのためにも、早く漢字を覚えることも大事だと思いました。
雲の世界 二十七日目
今日、やっと雨が止みました。お姉さんの体調もだいぶ良くなってきて、すごくうれしいです。今日はお兄さんと一緒に図書館へ行きました。『海』の情報はなかなか集められないそうです。私も手伝ったけれど、とりあえず秋の旅館にはありませんでした。お兄さんは私に休んでろというけれど、私からしたらお兄さんもずっとかんびょうしたり本を探したりして動きっぱなしなのでとても心配です。お姉さんが元気になったら、早くお兄さんにも休息をとってほしいです。
雲の世界 二十八日目
お姉さんが動けるくらい元気になったので、今日はずっと前から気になっていた遊園地へ遊びに行きました。二人の体力が心配だったので、少しだけ遊んでから旅館に帰りました。すごく楽しかったです。遊園地のキャラクター、ぽむりんが可愛くて、お兄さんにキーホルダーを買ってもらいました。絶対に大切にします。
雲の世界 二十九日目
今日は一日ゆっくりしました。お兄さんはまた図書館に行くと言ったので、『海』の情報を集めないかと心配で一緒に図書館へ行ったけれど、お兄さんはざっししか読んでいなかったのでほっとしました。そうしたらお兄さんに何ほっとしてるんだと怒られてしまいました。でも、お兄さんが本気で怒ることはないと、今までの経験からわかっています。そんな面白いお兄さんが大好きです。もちろんお姉さんも大好きです。多分、お兄さんとお姉さんは両思いだと思います。れんあいの方の大好きだと思います。なかなか進展しないのもまた面白いなと思います。
雲の世界 三十日目
今日は雲の世界に来てちょうど一ヶ月の日です。お兄さんとお姉さんには内緒で春の旅館に行って、二人にお花のかんむりを作りました。渡したら、お姉さんは泣いてよろこんでくれて、お兄さんは少し照れくさそうに受け取ってくれました。二人ともよろこんでくれてとても嬉しかったです。明後日にはるりさんや美由きさん、それにりりかちゃんが帰ってしまいます。だから、明日はお別れパーティーを開きます。別れてしまうのは寂しいし、りりかちゃんは私と会ったことを覚えてはいられないけれど、私が『自分の欠片』を探して『ここ』にもどって、りりかちゃんとお話ししたいと思っています。
雲の世界 三十一日目
今日はお別れパーティーを開きました。冬の旅館で開いたので、いつもとは違う景色を楽しむことが出来ました。冬の旅館で出たご飯はとてもごうかで、レモンパイがとてもおいしかったです。るりさん達三人とはたくさんお話しました。とくに、りりかちゃんとはこの世界で会うのは最後なので、一つでもいいから覚えて帰れたらいいのにと思いながら話しました。もし、りりかちゃんが覚えていなくても、私が覚えて帰って、また二人でお話したいと思います。
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