(十二)
くたくただ。今日は暗号を見つけたから早く帰れたものの、昨日までは夜の九時くらいまで『自分の欠片』探しをしていた。陽菜ちゃんも疲れているようで、後で起こしてねと言って早々に布団に入ってしまった。すやすやという寝息が耳に心地良い。そう思っていた矢先、ガチャリという音を立てて部屋の鍵が開く。入ってきたのは当たり前だが悠稀君だった。最近は、出会った時に瑠璃さんが言った事が頭から離れず、上手く悠稀君と目を合わせられない。合わせようとすると気恥ずかしくなって逸らしてしまう。悠稀君が私のことを好いている。勿論これは瑠璃さんの
そんなことを考えていて入ってきた時には気が付かなかったが、悠稀君の小脇に抱えている物は何だろうか。クリスタルで覆われた宝箱のような
悠稀君も私の視線に気がついたのか、にやりと笑う。
「今日の戦利品」
そう言って畳の上にどかっと座り、クリスタルの宝箱をテーブルに乗せる。
「今日、真昼なのに星が光ってたんだ。そんで東方の三博士の話を思い出してついてったらユニコーンがいた。ユニコーンに乗って着いた先には真っ黒な森。あれは真っ暗なんかじゃなかった。真っ黒だった。とにかくその森の中にこいつがあったって訳。でも中には紙切れ一枚しかないし、その紙にも暗号みたいなのしか書いてなくてよくわかんなかったから宝箱ごと持って帰ってきたって訳」
「その森、私達が今夜行こうとしてる森かも」
「本当か?ならやめといた方がいい。俺が行ってこれを取ってきたからもう何も無いと思う。それに、昼でもあんなに真っ黒な森、深夜に行ったら危険だし怖いと思うぞ」
きっと私が怖がると思って凄みを聞かせて言っているのだろうが、私は
「じゃあ私、瑠璃さん達に伝えてくるね。この話」
そう言うと、悠稀君はつまらなそうにそっぽを向く。
「……どうしたの?」
聞いても答えない。ああどうぞどうぞと言わんばかりに手をひらひらさせている。勿論こちらは見ていない。
「どうしたの?私達の間で隠し事は無し!それに、今は陽菜ちゃんも寝てるから、格好悪い事言っても聞くのは私だけだよ」
「………………なんだよ。」
「え?」
「何でもない。早く伝えてきたら?」
「分かった。伝えてきちゃうからね」
悠稀君は相変わらず手をひらひらさせている。
「……それが嫌なんだよ、なんて、言える訳ないよな」
そう呟くと、寝ているはずの陽菜ちゃんが、布団の中でにやりと笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます