(六)
この後の二週間、私達は『自分の欠片』探しも忘れて『雲』の世界を
*
雲の世界 一日目
今日は、本当に色々なことが起こりました。まず、学校に行きたくないと思ったら、不思議な電車がやってきて、神崎美れいさんというお姉さんと、月雲はるきくんというお兄さんに出会いました。そして、秋の旅館にとまりました。『自分のかけら』を見つけないと二人のことは覚えていられないけれど、きっと見つけられると信じています。今日の夜ご飯はたけのこご飯ととんじる、あとにものでした。にものはあまり好きではなかったけれど、旅館のにものはすごくおいしかったです。お姉さんは小説を書いているそうです。私はそんなお姉さんをそんけいします。お姉さんに、私も小説を書きたいと言ったら、まずは日記をつけるといいよと教えてくれました。だから、さっそくこのノートに日記を書いています。明日も楽しいことがたくさんありますように。おやすみなさい。
雲の世界 二日目
今日はみんなでたけのこ取りをしました。お姉さんもお兄さんも、今日は旅館のおかみさんからもらったTシャツとジーパンを履いていました。制服とはまたちがって、おしゃれだなと思いました。私は水玉もようのワンピースを着ました。すごく可愛かったです。たけのこは私の顔よりも大きくて、おどろきました。お姉さんもお兄さんもたくさん笑っていて、私も思わず笑ってしまいました。夜ごはんは、私たちが取ったたけのこでごはんとにものを旅館の人が作ってくれました。自分で取ったからか、いつもよりおいしく感じられました。
雲の世界 三日目
今日はみんなで読書をしました。旅館には私の家くらいあるのではないかと思うほど広い図書館があって、みんなでそこに行こうと決めていました。私は普段から読んでいた『黒魔法使い☆ユリカ』を読み進めました。お姉さんは心理学というお勉強の本、お兄さんは雑誌のようなものを読んでいました。それを見てお姉さんはあきれたような顔をしていました。どんな内容だったんだろう。
朝ごはんに出たヨーグルト、秋のフルーツがたくさん入っていて本当においしかったです。
雲の世界 四日目
今日はみんな、それぞれバラバラにすごしました。お兄さんは旅館とそのまわりの散歩、お姉さんは旅館のはなれで小説を書き、私はお姉さんのそばで少し勉強をしていました。参考書も図書館にあったので、少しかりてきました。お姉さんが勉強を教えてくれました。先生よりわかりやすいと思いました。これなら、向こうの世界に戻っても、勉強に遅れないのではないかと思います。
雲の世界 五日目
今日、気がついたことがあります。どうしてみんなといると居心地がいいのか、それは、学年が違うからだと思います。お兄さんもお姉さんも歳上で、私の不登校のこととかも詳しく聞いてこない。それが、すごく居心地がいいのだと思います。今日はこれだけ書いて寝ます。今日もとても楽しかったです。
雲の世界 六日目
今日は食堂に行ってご飯を食べました。バイキングで、お兄さんはたくさんお肉を食べて、お姉さんはたくさんデザートを食べていました。私はたくさんフルーツを食べました。秋のフルーツはおいしくてみずみずしくて大好きです。その後は少し休けいして夏の旅館のプールに行ってきました。水の温度がちょうど良くて気持ちよかったです。
雲の世界 七日目
雲の世界に来て一週間がたちました。すごく楽しくて、時の流れが早いと思いました。ここに来て、お兄さんとお姉さんに会えて、しつこいけれど本当に良かったと思います。お兄さんはちょっと不思議だけど私たちのことを心配してくれるし、お姉さんは勉強や小説のことをたくさん教えてくれるので、本当にすてきな二人に出会えたと思います。ほとんど感想文みたいな日記ですが、今日思ったことはいつか忘れてしまうというお姉さんの言葉を思い出したので、なるべくくわしく書こうと思いました。
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