変わらないものはない 2023/12/26

 スーパーの卵の値段を見て、大きくため息をつく。

 最近どうにも卵の値段が高い。

 変わらないものはないとは言えど、やはり変わらないでいて欲しいものはある。


 卵の値段以外もいろいろ変わった。

 他の食材や、光熱費、社会保険料、ガソリン。

 悪い方にばかり変わっていく。


 自分の給与は変化がないというのに、これは一体どういうことか?

 世の中の不公平のはいつになっても変わらない。

 これを一番変えて欲しいんだけどなあ。


 頭の中で、愚痴を言っていると、小学三年生になったばかりの息子が買い物かごに何かを入れたのが見える。

 見なくても分かる。

 お菓子だ。


「お菓子は買わないって言ったでしょ」

「お菓子じゃないよ」

 違うと言われたので、かごの中を見る。

 お菓子だった。


「お菓子じゃん」

「それはママへのプレゼント」

 プレゼントと言われれば嬉しいが、ママはダイエット中なのでお菓子を食べません。

 知ってるよね。


「僕のはこっち」

 と、指をさした方を見ると、小さなノートが入っていた。

「ノート?何するの?」

「勉強」


 べん、きょう?

 私は一瞬耳を疑う。

 君、勉強嫌いだよね。


「本当に勉強するの?

 『もう勉強しない!』って、この前言ってたじゃん」

「んー、最近勉強が楽くなってきた」

「へぇー」


 褒めるかどうか、悩みどころだ。

 本当に勉強する気があるのかもしれないが、実際にするかは別問題だ。

 ソースは学生時代の私。


 少し考えて、結論を出す。

 よし、おだてて勉強をさせる方向で行こう。


「すごい。勉強楽しくなっちゃったか。

 じゃあ、勉強しないとね」

 そう言うと、息子は嬉しそうに笑う。


 レジに向かう間も、ほめちぎり勉強のやる気を出す。

 この様子を見れば、家に帰っても勉強をするはずだ。

 一時間くらいは…。


 しかし、この息子が勉強したいなんて言うとはね。

 小学生に入ってから、勉強が嫌いだ嫌いだって言っていたのに、変わるものだ。

 いい先生が担任になったのだろうか。

 変わらないものはない、ということか。

 よい方向に変わったことに、少しうれしくなる。


 しかも息子が率先して買ったものを袋詰めしてくれている。

 成長したなぁ。

 感心しながら様子を見ていると、あることに気づく。

 なんと、お菓子が二つに増えていた。


 君、そういうところは本当に変わらないよね。

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