クリスマスの過ごし方 2023/12/25

 世の中の皆様の中には、クリスマスの日に恋人と過ごす人も多いだろう。

 だがクリスマスは私にとって、一年のうち最も気が張る一日である。


 別に恋人の彼氏が嫌いなわけではない。

 彼は毎年12月24日の夜は、仕事で出かけてしまう。

 そして翌日25日、仕事を終えて疲労困憊の彼を、いろいろフォローしないといけないからだ。

 勘違いしないでいただきたいが、別にフォローするのが嫌なわけではない。


 私はドジな性格で、むしろクリスマス以外はフォローしてもらっている。

 なので、一日だけ彼の世話をするのは、むしろ恩返しになり嬉しいのだ。


 じゃあ、なぜ気が張るのか。

 彼には大きな秘密があるのだが、それを知らないフリをしないといけない。

 その秘密とはなにか、言わなくても分かるだろう。

 そう、恋人はサンタクロースなのです(ばーん)。


 一度軽くカマをかけたことがあるのだが、その時とんでもない絶望の顔をしていたので、バレてはいけないのだろう。

 もちろん普段は秘密がばれないように、うまく立ち回っている。

 付き合ってから、初めてのクリスマスまで少しも疑いもしなかった。


 でも、クリスマスの日だけは、疲労のために彼はポンコツになる。

 サンタの服が脱いだまま彼の部屋に投げてあったり、プレゼントを配るための子供のリストが投げてあったり。

 そういえば、トナカイを連れて帰ったときもあるな。


 そのあたりまでは‘疑惑’レベル、というか疑惑だと信じたかった。

 決め手は、迎えに来てくれと言って迎えに行くと、空飛ぶソリから降りているところを目撃してしまったことだ。

 あれは言い訳できんよ。

 何も気づいていないフリをするのは大変なのだ。


 そして、今年のクリスマスの日、彼の部屋の前までやって来た。

 一度深呼吸する。


 大丈夫、私はあらゆる状況を想定して、イメージトレーニングした。

 どんなに予想外のことがあっても、なんとか出来たじゃないか。

 今年もうまく切り抜けることが出来る。

 そう何度も自分に言い聞かせる。


 そしてもう一度深呼吸して、呼び鈴を鳴らす。

 少しの静寂ののち、彼がドアを開けて迎え入れてくれる。

 その彼を見て、私は固まってしまう。

 さっそくハプニングだ。


 今日の彼は、着替えていないのかサンタ服のまま。

 なんとかリアクションせずに部屋に入ると、部屋の中にはトナカイが3匹いた!

 思わず目をそらすと、その先にはソリがフワフワ浮いている。

 よく見れば、ソリの中に酔いつぶれた知らないおじいさんがいる。


 自分でも顔が引きつっているのが分かる。

 これは想定外だ。


 これ、どうやって知らんぷりしよう。

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