手を繋いで 2023/12/09

「手を繋いでいた宇宙人のことを思い出すなあ」

 僕は思ったことを口に出す。


「うん?ああ、二人の大きな男の人と手を繋いでいるヤツ?」

「そうそれ!」

 パパはすぐに分かってくれた。

 さすがパパ。

 でもママは分からなかったみたいだった。

「連れ去られる宇宙人だよ」

 パパがそう言うと、ああアレねって言ったから知ってるみたいだ。


「でもあれ、合成写真だって。しかもドイツの雑誌のエイプリルフール記事」

 パパが嫌な事をいう。

「もー夢壊さないでよ」

「次の週でネタバラシしたら、送られて来た抗議文みたいなこと言うんじゃない」

 僕が文句を言うと、変なツッコミが返ってきた。


「それでなんで宇宙人を思い出したの?」

 パパが聞いてくる。

「今、僕はあの宇宙人みたいだなって」

 僕はパパとママの手を繋いでいる。

 あの写真みたいに。

「それで、あの宇宙人の気持ち、ちょっとわかるなあって思って」

「宇宙人の気持ち?」


 パパとママが不思議そうにこっちを見ていた。

「どんな気持ちだと思ったの?」

 ママが聞いてくる。

「手が疲れるなあって」

 そう言うと、パパとママは楽しそうに笑った。


「疲れちゃったか。じゃあ抱っこしちゃうぞ」

 そう言ってパパは僕を抱っこした。

「これで宇宙人君は疲れないね」

 パパは笑っている。


「ダメ」

 僕はダメ出しする。

「何がダメなの?」

 パパが不思議そうに聞いてくる。

「ママが一人ぼっち。ママ、手を繋いで」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る