逆さま 2023/12/06

「おはよう。おや我がライバルの葵さん、なにか困ってるようね。どうしたの?」

「あ、親友の友子ちゃん。おはよう」

「親友じゃないから」

「友子ちゃんってば天邪鬼なんだから。

 実はね、書く習慣っていうアプリで、お題に『逆さま』が出たの。でも何も思い浮かばなくて…」


「確かに、素直で箱入りで、何度騙されても人を疑う事を知らない葵さんには難しいかもね」

「今さり気なくディスらなかった?本当に親友じゃないかもしれない」


「親友じゃないのよ。

 だけど大丈夫。私が良いことを教えてあげよう」

「ホントに。助かるよ。やっぱり親友だね」

「違うから。悩み事のせいで、力が発揮できないあなたに勝っても嬉しくないのよ」

(素直じゃないなあ)


「何よその顔。やっぱり教えるのやめようかしら」

「…さすが私のライバル」

「分かればいいのよ」

(チョロいな…)


「それでアイデアというのはね。股のぞきというものよ」

「股のぞき!聞いたことある」

「逆さまになって股を覗いて景色を見ると、景色の見え方が変わるの。

 葵さんはあの名誉あるイグノーベル賞の話題で聞いたことがあるのかもね」

「なるほど。イグノーベルで聞いたのかもしれない」

「それにイグノーベル賞もノーベル賞の一種の逆さまみたいなものだから、そこを広げると良いと思うわ」


「さすが友子ちゃん。完璧ね。でも一つ穴があるわ」

「穴?穴なんてあるかしら」

「うん。締切の夜七時がもうそこに迫ってるの」

「えっ」


「だから、調べる時間が無くて、このまま書くしか無い」

「このまま?」

「そう、このまま。

 さっきから逆さまを言ってる友子ちゃんのことを書くよ」

「待って、葵さん。私は逆さまではないわ」

「大丈夫。友子ちゃんはそのままでも面白いから」

「心配してるのはそこではないわ」

「友子ちゃん。私たち親友だよね。だから書いていいよね!」

「…本当に親友じゃないかもしれないわ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る