間話 二つの絶望、あるいは希望
夕焼け小焼けで日が暮れて
山のお寺の鐘が鳴る
おててつないでみな帰ろう
そんなわけにはいかなかった。
何故ならいま源三郎が見ているのは真夜中の夕焼けだったからだ。
夕焼けが全てを燃やしていく。家も、人も、それ以外のものも、何もかも。
全てが燃えたのだから当然、源三郎の初恋の人も燃えてしまった。
目の前で炎に包まれて。なんとか消そうとしたけど駄目だった。
あとから知ったことだがあの日の炎はとても燃えやすく消えにくい炎だった。
そんなものを空から落としてくるなんて、なんて酷いやつらだろう。
絶対に仕返しをしてやると誓った。
でも駄目だった。その機会は永遠に失われた。
戦争が終わってしまったから。
だから考えなくてはいけなかった。目の前で燃えていった全てのものに対して、他にもできることがあるのだろうか、と。
幼い頭で考え抜いて、二つだけ思いついた。
源三郎はその二つを実現するためだけに、これからを生きようと決心したのだった。
いたって平和なクリスマスの光景。
その様子を高台から見ていた×××は、ぽつりと呟いた。
「つまんない」
そして不満そうに目を細める。まるで見えている全てへと憎しみを向けるように。
「折角、良い子のためならなんでもする狂ったサンタを用意したんだけどなあ」
そいつが暴れてくれることを期待していたのだが、うざったい女天狗と退魔師の少女二人に止められてしまったのだ。
玩具を取り上げられて不満そうな顔を浮かべていた×××だが、すぐに気を取り直してにいっと、無邪気な笑みを浮かべる。
「まあいっか、どうせ全部なくなるんだし」
あんなのは余興に過ぎない。敵国の祭りで騒ぐ人たちを見てるとむかむかしたからやっただけ。
本番はこれから。怒りも憎しみも悲しみも、何もかもがこれから始まる。
「みんな、みんな燃やそう。全部、全部燃やそう。わたしたちを燃やした敵の力で復興した国なんていらない」
一拍の間をおくと、×××は呪いを吐き捨てる。
「だってそれは敵国と同じじゃない?」
そして、憎悪に満ちた笑みを浮かべた。
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