EX10 一ノ瀬アリスの行方
「そ、そんな……」
一ノ瀬アリスは目の前で起きた事象を上手く飲み込めないでいた。しかし呆然とし立ち尽くすばかりでは事態が解決するわけもない。
ましてや目の前に広がる地獄の底に繋がるような大穴が消え去ることは決してなのだ。
『おうおう、こりゃまた随分と派手にやりやがったなぁ』
気がつけばアリスの隣には見覚えのない人影が一つあった。
「貴方は誰っ!?」
『おいおい一応相棒だってのにつれねぇなアリス嬢』
いつの間にかそこにいた男。
無精髭かつ無造作に伸びた手入れしてない髪、だらしなく着崩れた着物のような衣服。浮浪者といわれてもあまり否定のしようがない男だった。しかしどこか気品というか風流さも感じれた。
見覚えは微塵もなったが、その口調と声音に聞き覚えはあった。
「そう貴方、
アリスの言葉に魔導本だった男はなんとも不機嫌そうに眉をひそめた。
『ま、正直俺もこんな人間の真似事みてぇな姿になんざなりたかなかったんだがよう。しかし、どうにもそんなこと言っている状況でもねぇ』
一拍。
『アリス嬢、恐らくだがあの小僧は生きてんぞ』
「それは本当なのっ!?」
希望的観測と謗られたとしてもすがりたい一心だった。
災害とも言える魔王の一撃により明星影人は地の底へ飲み込まれた。どれだけ甘く見積もっても決して生き残っているようには思えなかった。
それでもアリスは今だけでもその滑稽無糖な話を信じたかった。
『あぁ間違いねぇ。あの小僧を殺すだけならこんなド派手なことをする必要はねぇんだ。あの魔王は意図的にこの大穴を空けたのさ』
「意図的?」
『ま、大方トネリコ、いや第二王女モルガンのクソ野郎の索敵から逃れるためってとこかね。ったく、あの
魔導本はアリスが次の言葉を発する前に更に言葉を重ねた。
『ま、アリス嬢の世界風の言葉でいえばアレだアレ。ウェルカムトゥアンダーグラウンドってやつだ』
そして魔導本はニヒルな笑みを浮かべて奈落の底に視線を落とした。
◆
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