EX9 それぞれの行方③


 書物やら怪しげに発光する薬品、けったいな造りをした観測器に溢れた薄暗い部屋。

 そこはそれなりの広さを有するのにも関わらずろくに足の踏み場は存在しないという名状しがたい有り様だった。


 ていうかなんか無駄に高度そうな学術本やら魔導本の合間にこれまた頭がゆるそうな恋愛小説本が少ない数散らばっている件について。しかもジャンルは幼馴染恋愛小説しかない徹底具合。なんというか持ち主の執着というか執念の強さが伺える。怖い。


 とりあえずまぁ俗に言う汚部屋といっても差し支えなかった。


 そんなゴミの掃き溜めのような部屋の中、本や玩具ガラクタに埋もれるように彼女はいた。


「んおっ!? この私としたことが寝てました? んー心なしか体が軽いですね」


 彼女が慌てて体を起こしたところで地面に振り投げられた魔道具の一つがけたたましく鳴った。


『ザ、ザザザ、』


「むむ、なんか最近調子悪いですねぇ。ちょぁーーーーー!!!」

 

 彼女は何を思ったのか魔道具に出来るの手刀を叩きつけた。随分と旧式レトロな復旧方法だがそれでいいのだろうか。

 しかも今の一撃で直ったらしい。ほんとそれでいいのか。


「はいはい此方、天使すら羨むほどの超絶天才美処女様ですよー☆」


『ぅおい、このアホンダラ放蕩娘が!! どこにまた引きこもっているんじゃ!! 主がおらぬうちに随分と事が進んでいるんじゃがっ!!』


「あー計画はこの上なく順調。やはり彼は私の見込んだ通りなのです。あ、最近あのアバズレ王女のハッキングが酷いので切りますね」


『おいこら! まだ話は終わっていないのじゃ!! おい、マーリ――』


 通信は無慈悲にもここで切断された。通信の向こう側の存在はおもっくそ激昂していたが大丈夫なのだろうか。

 しかし、当の本人に気にした素振りはまるでない。むしろ鼻歌交じりまである。


「君に会うのがたまらなく楽しみだよ――ようやく会えるね影君♪」








 ◆


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