第68話 魔王戦決着①

 災害級ともいえる絶対的な破壊を伴った魔王の猛攻。百を超える大槌。

 その威力たるや大層凄まじいもので、その気になれば都市、いや国すら簡単に陥落させることが出来るのではないだろうか。


 そしてその全てをその身に受けた俺と聖剣ちゃんは全くの無傷だった。


「クカカッ! その力、本物じゃなっ!!」


 魔王はその攻勢の全てを無効化されたにも関わらず、どこまでも愉快そうだった。なんでだよ。


 百を超える大槌はその全てが俺の接触した瞬間に霧散した。


 そうこれこそが聖剣ちゃんの真名開放形態:疑似楽園再現アヴァロン

 魔力拡散性能を持つ聖剣ちゃんが幾重にも分離し、鎧の如く全身に装着された形態だ。

 ぶっちゃけていえばゲームでいう魔法攻撃完全無効化状態。


 これだけでも尋常ならざる能力に聞こえるが、この世界においてはその言葉以上の意味を持つ。


 絶対龍種の火炎息吹や魔王の猛攻。そのどれもが根幹としているのは魔力だ。というかこのファンタジーの世界全ての根幹及び中核に魔力が存在する。


 つまりそれを無効化出来るこの形態はこの世界において絶対的なアドバンテージを持つともいえるのだ。


『しかしマスター』


「あぁうんそうだな」


 俺は聖剣ちゃんの呟きに頷いた。

 このままでは決着がいつまで経ってもつかない。いくら聖剣ちゃんの鎧でその全ての攻撃を無力化出来たところで、魔王の魔力は無尽蔵だ。その身に余るほどの魔力で大槌を百以上顕現させたにも関わらず、まるで疲労した素振りもないし。


 とにかくこれでは焼け石に水だ。


「いやぁその聖剣製鎧、げに恐ろしい恐ろしいのぅ」


「よくいうよお互い様でしょ。そっちの大槌も随分と厄介だぞ」


「腐っても七つの終末機構セブンスアポカリプスの一端を担っているからの。それでどうするつもりじゃ?」


 魔王は千日手しても妾は一向にかまわんぞ、と嗤った。

 戦闘狂かよ。だが生憎俺にそんな趣味はないし、付き合う義理もない。


「ならこうするのさ。聖剣ちゃん!」


『はいマスター! 行きなさい我が分身よ――聖捕縛ディバイン


 実はこの鎧は任意で分離出来る。

 分離した三つの聖剣鎧は空駆ける流星の如く魔王までの距離を駆け巡り、その大槌に張り付いた。


「な、なんじゃこれは! んおっ魔力が一切通らぬじゃと!?」


 魔王はその表情を驚愕に染めた。

 魔力拡散性能を持つ聖剣の一部が強制装着されたのだ。当然だが魔力など使えるはずもない。


 これが。これこそが聖剣ちゃんの鎧形態における真骨頂だ。


 魔力拡散性能もとい絶対魔力制圧性能。

 その鎧の一部を分離・射出し対象の魔力を

 そういう意味では反逆アンチ七つの終末機構セブンスアポカリプスともいえるだろう。


『マスター今です!!』


 聖剣ちゃんが高らかに叫んだ。

 とにもかくにも魔王の七つの終末機構セブンスアポカリプスは封じた。

 そして大気中には聖剣ちゃんが拡散させた膨大な魔力が揺蕩っている。それはかの絶対龍種のものすら軽く凌駕するほどだ。


「いくよ魔剣ちゃん」


『ぶ~ようやく私の出番なんですけどぉ。クソザコマスター、聖剣ちゃんとばっかりイチャつき過ぎぃ』


 なんとも不満そうに魔剣ちゃんが応えた。

 そういえば聖剣ちゃんが覚醒してから発言が少なかった気がしないでもない。どうやら彼女なりに気をつかってくれていたらしい。メスガキなのに。


『ほんとマスターって女の子の扱いがなってないわよねぇザーコ♡ザーコ♡』


 魔剣ちゃんのメスガキ具合は置いておくとして。

 つまり。つまり今まで見たこともないレベルで魔剣ちゃんによる超弩級大剣の生成が出来るわけである。


 ズオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


 周囲にむせ返るほど漂う魔王の魔力。魔剣ちゃんはその全てを余すことなく喰らい、その身を際限なく膨張させていく。淀み渦巻せめぎ合い。全ての魔力はたった一振りの刃に錬成されるのだ。

 全ての過程を経て誕生せしは天空すら貫く超超超弩級漆黒大剣だった。


「アバヨ、ロリ魔王」


「クソがああああああああああああああああああああ」


 轟ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ


 今更、魔王に抵抗する術があるわけもない。一切合切の慈悲もなく漆黒大剣が叩き込まれた。






 ◆


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