第61話 いきなり魔王戦《クライマックス》③
耳を
そこには一切の慈悲も容赦も存在しない。
そして俺はここで『やったか!?』なんてフラグを立てる甘い陰キャではない。
「一ノ瀬ッ!!」
「――ええ!」
先手必勝。連撃確殺。乾坤一擲。
一ノ瀬は待っていましたと言わんばかりに勢い良く魔導本を開いた。バララララッと勢い良く捲れる頁が無駄に格好良いぜ。
『消し炭になりな』
「
上空に出現したおびただしい数の火炎弾丸。あの王国軍隊ですら一網打尽した一ノ瀬と魔導本の殲滅魔術だ。
本来は広範囲に放たれるものだが、そこは魔導本の座標固定能力。まるで
ズガガガガガガガガガガガガガ
その威力たるや大層凄まじいもので、後に残るは土煙と焼け焦げた匂いだけである。
「一ノ瀬、これは……」
「えぇ」
一ノ瀬は俺の言葉に神妙な顔をして頷いた。
これは流石に勝ったか?
何せ今現在もちうる最大級の火力をぶちかました。しかも魔王の膨大な魔力を加えたものだ。
これで駄目ならもう手がない。文字通りからっきしだ。
まぁしかし塵すら残りそうもない超絶火力連撃だ。いくら魔王とはいえ、常識的に考えてここで立ち上がれるわけもない。
この時、俺は一切の慢心も油断も疑問すらなく、心の底からそう考えていた。
『マスター……』『マスターちゃん……』
しかし、しかしだ。世の中は基本クソであり思い通りに事が進まないのが常だ。
それを証明するかのように、聖剣ちゃんと魔剣ちゃんが同時に声を上げた。
高く舞い上がった土煙が徐々に晴れていく。そして晴れていくにつれて一つの人影がその輪郭を明確に浮かび上がらせた。クソまじか、まじかよ。
「そ、そんな……」
「んな馬鹿な」
「クカカカカカカカッ!!!!!」
辺りに響き渡った嗤い声は俺が今、心の底から聞きたくないものだった。
ダメだ、目の前の現実があまりにも受け入れがたく、思考がまるで上手く回らない。早急に現状を把握しなければならないにも関わらず、脳が全力でそれを拒否している。
しかし、現実はどこまで行っても非常だ。
「クカカッ、狂瀾怒濤の連撃。うむ、これは見事じゃ! 敵ながら素直に賞賛を送ろう!!」
人影は当然ながら魔王だった。
彼女はそこに一切合切の怪我を負わず、ピンピンと立ち尽くしていた。
◆
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