第60話 いきなり魔王戦《クライマックス》②

「久々に七つの終末機構セブンスアポカリプス保持者同士のぶつかり合いじゃ。簡単に死んでくれるなよ?」


 魔王は獰猛な嗤い顔を浮かべて、大層自慢げに全長一〇〇メートルすら超えるであろう大槌を掲げた。


 まじかよ。ちなみに今から入れる保険はない模様。そりゃそうだ。


「それにしても……デカ過ぎんだろ」


「えぇそうね……でも何故かしら。明星君の言葉から不穏な空気を感じるのだけれど」


 こわエスパーかよ。なんで元ネタも分からないのに反応出来るんだよ。


『あ~マスターはマスターにしか分からないオタクチックなネタをさらっと会話に挟んできますからね。良くないですよそういうの』


『あ~マスターそういとこあるよね~』


 聖剣ちゃんの言葉に魔剣ちゃんがウンウンと言わんばかりにその剣身を上下させた。


『ま、小僧にそういうのも期待するほうが無理ってもんだろうよ』


 ラスボスを前にして、しかも絶体絶命的な状況なのに言いたい放題である。


 しかしいくら軽口を叩き合ったところでこの酷い状況が改善するわけもない。むしろ逆。


「――そろそろいいかの?」


 魔王は今にもその超弩級大槌をこちらにぶちかまそうとしている寸前だ。当然、そんなことをされればこの都市もろとも命なんて簡単に消し飛ぶ。

 その純然たる事実をハッキリと認識したその時、俺の中で何かスイッチのようなものが入った感覚がした。


「聖剣ちゃん行くよ」


『え、あ、はい』


 そこからの動きは自分でも驚くほど冷静かつ何の逡巡もなかった。

 本能と言えば正しいだろうか。魔王を目の間にしてそれは臨界へと達し勢い良く弾け飛んだ。


 そして本能と思考がガチリと嵌まった。歯車が歪みなく嚙み合った感覚に近い。


 やることも出来ることも最初ハナから全部決まっている。なら重要なことは一瞬すらの逡巡もなく実行に移すことだ。


 特に具体的な指示を出すわけでもなくフワフワと浮いている聖剣を掴み取り勢い良く接近、そして問答無用で聖剣を大槌に叩き込んだ。


「跡形もなく消し飛べ」


『美処女聖剣ちゃんスーパースラッシュ!!』


「むおっ!?」


 この展開は流石の魔王も予想していなかったのか、感嘆の声を上げた。


 俺はこの異世界に転移してきたばかりだが、数日をここで過ごし大枠の常識は何となくだが理解することが出来た。


 ここは魔力を根幹とした世界である。


 異世界なんだから当然だろと言われればぐぅの音も出ないがやはり元いた世界、神秘など跡形もなく消え失せた世界とはあまりにも根幹法則が違うのだ。


 魔術や聖剣。そして魔獣に絶対龍種。どれも元いた世界ではあり得ない存在だ。

 あの巨大化した大槌だってそうだ。原理こそまるで理解し得ないが明らかに物理法則を逸脱していた。


 その答えは何か? おそらくというか考えるまでもなく答えは魔力だ。そう考えれば色々と辻褄が合う。というかそう考えるしかないわけだが。


 だから話を戻すと、あの超巨大大槌も実体こそあれどその構成物は魔力が中心のはずだ。


 バアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア


 つまるところ魔力拡散性能を保持するこの聖剣をぶつければ、あの大槌は跡形もなく霧散するはずなのだ。


「なにいぃぃぃ!?」


 魔王ヴォーティガンが驚愕の声を上げた。

 目論見は成功した。超弩級大槌は勢い良く霧散し、元の大きさへと戻った。


 そして更に言えば、霧散したということはこの空間には膨大な魔力が滞留していることに他ならない。


 絶体龍種ドラゴンの時と同じだ。

 その膨大な魔力は魔剣の餌となる。


「行くよ魔剣ちゃん」


『うんっ!』


 魔剣の魔力収束性能。

 それにより生成されしは超弩級漆黒大剣。絶対龍種ドラゴンの時とは比較にもならないレベルだ。それは霧散された大槌にも匹敵する。


 ズオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


「ちょっ、まっ!?」


 魔王があまりもな急展開に狼狽した声を上げた。

 知ったことか。一瞬の暇すら与えない。


 俺は一切の慈悲すら与えず、超弩級に巨大化した魔剣を魔王に叩き込んだ。












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