第50話 アリスと魔導本の真骨頂①
「私達の真骨頂、見せてあげるわ」
百を超える王国兵士達を前にしても、アリスは何の逡巡もなくそう啖呵を切った。ブレイクタイムに珈琲を決め込むお嬢様並みの優雅さ的な感じまである。
「ハッ粋がりやがって。テメェみたいな無能に何が出来ると思ってやがんだ!」
対してヤンキー氏はまるで物怖じけしないアリスに大層不機嫌そうに舌打ちをした。
うわぁ。
ドン引きするぐらいのイキリムーブだ。大丈夫かな。今やアリスは爽やかな草原を地獄のような焦土に豹変させるヤベー魔術使いなんだけど。灰すら残らないんじゃなかろうか。
しかし、改めてアリスを見ると魔術使い(全)が本当に無能ジョブなのか疑問なところではある。そこんとこどうなの聖剣ちゃん?
『まぁこの世間の共通認識としてアリスちゃんのジョブは完璧なハズレ枠ですからねぇ。アリスちゃんが例外なだけでそのほとんどが大した魔術を扱えませんしね』
しかも聖剣ちゃん曰く、ジョブ持ちの中では一番多く存在しているらしい。マジかよ。
「ケッこの状況で一ミリもビビらねえぇとかマジで白けるわ。この俺様が直々に手を下すまでもねぇ。お前等死なねぇ程度にボコしておけ」
「よ、よろしいので?」
「おう、良い感じにやっとけよ。あ、顔だけは傷つけんなよ」
困惑する王国兵を尻目に、ヤンキー氏は興味がなくなったのかやる気なさそうに欠伸し始めた。発言も最低なんじゃが。
そもそもお前が相手するとか言い出したんだろうが。その場の感情だけで生きている感じがまじヤンキーって感じ。
「そういうわけで悪く思わないで頂きたいアリス殿。あまり怪我をさせたくありませんし、大人しく投降してくれればありがたいのですが」
王国兵士隊長が一歩前に出て申し訳なさそうにアリスに提案してきた。宮仕えって本当に大変そうですね。
「お断りよ。誰にものを言っているのかしら」
アリスはそれをこれまた何の逡巡もなくバッサリと切り捨てた。仲間の俺が言うのもアレだけど本当に恐ろしい女だ。
しかし当然ながら、ヤンキー氏はもちろん王国兵士達の表情に不安の色はまるでない。王国兵に至ってはただをこねる子供を見るかのように呆れたように肩を竦めているぐらいだった。
彼らの反応を見るに、やはり魔術使い(全)はこの世界において無能扱いなのはまぎれもない真実のようだ。
それに常識で考えればこの戦力差を個人でひっくり返せる人間などほとんど存在しない。故に彼らは俺達に負けるなど微塵も思っていないようだった。
そんな中、アリスは何故か振り返り俺に視線を投げかけた。なんぞ?
「明星君、分かっていると思うけど手出し無用よ」
「あぁ分かってるよ。むしろ思いっきりぶちかましちまえ」
なので俺は迷うことなくアリスに向け拳を突き出すことにした。彼女はそれを見て微笑を浮かべると再び王国兵士達に視線を戻した。なんて好戦的なお嬢様だ。まぁ嫌いじゃないけど。
「待たせたわね。さて始めましょうか」
アリスと王国兵士達の緊張感のある空気が張り詰め始めた。どちらが先に動くか、そんな感じだ。
「有象無象がぞろぞろと鬱陶しいわね」
『目にもの見せてやろうぜアリス嬢。俺様の真骨頂は魔力増幅ではなく――座標固定』
先に動いたのはアリスだ。
彼女はカッと目を見開き、魔導本を勢い良く開いた。
ブオン
その行動に呼応するかのように。突如、魔法陣が王国兵士一人一人の腹部辺りに浮かび上がった。
「はぁ!?」
「な、なんだこれは!?」
「くっ、くそう!? とれねぇ!?」
当然、慌てふためく王国兵達。しかし今更遅いし、後の祭りというやつだ。
「行くわよ」『行くぜ』
一拍。
「
その言葉を
かくして彼女の真骨頂を見せるという宣言通り。
その魔法陣一つ一つから炎弾が生成され、その全てが王国兵士に向けて容赦なく降り注ぐのだった。
◆
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