第49話 まさかの人物到来②
「ギャハハハ! このクソ陰キャが!! 今更謝ったって遅ぇぞ!!!」
「ま、そういうことだ。悪いね陰キャ君」
王国兵にまぎれて現れたのはまさかの人物だった。同じ異世界転移者でありクラスメイトでもある存在。陽キャイケメンである
うーん、そこまで日数は経っていないはずだが随分と懐かしく感じる面々だな。具体的には四○話分ぐらい。
『マスター、そのネタ伝わりにくいですよ』
「聖剣ちゃん、やっぱり俺の心の中を読んでるじゃん……」
『テヘ☆ペロ』
まじか。こいつ遂に否定すらしなくなったよ。
心の中をどこまで読めるのか気になるところではある。
あれだよね? 意識の表層ぐらいしか読み取れないとかそういう感じのやつだよね?
そうじゃないと前にも言ったが非常に不味い。とにかく不味い。具体的には推しVチューバ―へのガチ恋勢も顔真っ青な劣情等とか。あんなの読まれたら軽く死ねるナリヨ。
「明星君。多分知りたくもないぐらいに阿呆なことを考えているのだろうけれど、今は自重なさい」
「ベツニソンナコトハアリマセンワヨ」
「なんでカタコトなのかしら……」
『毎回アリスちゃんに怒られて恥ずかしくないの? ほんとマスターってザコ♡ザコ♡』
『相変わらずお前らは緊張感ってのがまるでねぇなぁ』
そんな感じでいつも通りの雑談を繰り広げていると、天上院が何かに気がついたらしく声を上げた。
「おっとやはり君もいたか、アリス」
「気安くファーストネームを呼ばないでくれるかしら」
「つれないなぁ。一応許嫁のはずなんだけどね」
へぇー噂には聞いていたけどやっぱりそうなんだ。
天上院天下と一ノ瀬アリスは将来を誓い合った許嫁同士である、これは学園でまことしやかに囁かれていた噂の一つである。
名言されたわけではないが地主の息子と名家の令嬢、しかも美男美女だ。学園内ではかなり信憑性が高いものとして扱われていた。
「……っ!!」
しかし何故かアリスは物凄い形相で俺のほうにグルリと首を回した。
なんぞ?
「違うから」
「へ?」
「アレと許嫁とか違うから。いえ正確には違くないのだけれど、日本に戻ったら許嫁関係は解消する予定だから。間違っても変な邪推はしないようにっ」
「あ、はい」
なんだか物凄い剣幕だ。
正直、今更感が強いが彼女にも色々とあるらしい。まぁ陰キャだから女の子のことはよく分からないや。そういうのはあそこにいる陽キャイケメンに頼んでほしい。
「おいおい本当につれないなぁ。僕、そんなに嫌われるようなことしたかな?」
「コホン、天上院殿そろそろ」
「あぁごめんごめん、横道にそれすぎたね。分かっているさ」
そんなこんなしているうちに、苦々しい表情を浮かべた王国兵の隊長らしき人物が天上院に耳打ちした。中間管理職って大変そうですね。
「さてさて軽く怒られてしまったので本題に入ろうか。僕達は逃亡者である君達の拘束並び聖剣の回収に来たわけだが、ここは素直に応じてくれないだろうか」
天上院は余裕たっぷりのしたり顔で『悪いようにはしない』と付け加えた。
「よく言うよ。それわざわざ聞く意味ある?」
「その遠回しでいやらしい物言い。相変わらず癇に障るわね」
天上院の提案は言葉こそこちらに選択肢があるような言い様だった。
しかし百にも近い王国兵を並べた上で言っているのだから、実質脅しのようなものだ。拳銃を突きつけたに等しい状態で提案された善意など信頼できるわけもない。
「はは散々な言い様だ。流石の僕も傷つくんだがね」
これも口だけだ。彼の表情は一ミリたりとも変化していない。無駄にニコニコした表情が張り付いた陽キャイケメンフェイスである。
しかしこの余裕さは何かあるな。
いくら僕が陰キャとはいえ、こちらには聖剣と魔剣があるのだ。常識で考えればこの程度の戦力でどうにか出来るわけもない。
もしかして俺達みたく特殊な武器を所持しているとか?
念のため警戒して相手の出方を伺っていると、ヤンキー氏が声を上げた。
「おい待てや天上院。あの女、俺が教育してやんよ」
「ハハそれは構わないけど一応僕の婚約者なんだ。お手柔らかに頼むよ」
「ギャハハハ! わーってるって!」
なんて酷い会話だよ。アイツ等の後ろにいる王国兵達は若干引いているし、アリスに至っては産業廃棄物を見るかのような絶対零度の視線を送っていた。怖い。
「ってなわけで俺が相手してやんぜ」
しかしそこは流石ヤンキー氏。場の雰囲気を特に気にする素振りどころかまるで気がつくこともなく、意気揚々と俺達の前に出た。
「ヘヘヘッ、俺はお前みたいな気の強ェ女を屈服させるのが大好きなんだよ」
うわぁ。
しかもなんか舌なめずりしているし、明らかに邪な思いを抱いているのは確実だった。うーん、流石にこれは俺が相手してほうが良さそうか。
「一ノ瀬、ここは俺が……」
「いいえ、待ちなさい。私が、いえ私達がやるわ」
しかしそんな状況に関わらずアリスは俺を制止させるように一歩前に出た。
この人数を前にしても、彼女の表情には一切合切の恐れも怯えも存在しない。
「私達の真骨頂、見せてあげるわ」
そして彼女は魔導本を手に取り、大胆不敵という表現がぴったりの笑みを浮かべるのだった。
◆
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