第34話 魔導本


『はー黙って見てりゃなんて様だよ。まったく見てらんねぇぜ』


 突如として脳内に直接響き渡った謎の声。なんというか既視感が滅茶苦茶ある。またこのパターンか。

 いや正直助かったけど。アリスと俺の間に発生した謎の雰囲気。それを陰キャオタク童貞の俺にどうこう出来るわけもないのだ。何故か今、アリスは不機嫌そうだけど。クワバラクワバラ。


「この声は一体なに……?」


「え、一ノ瀬にも聞こえている感じ?」


 いつもの状況とは違い、今回の声は俺だけではなくアリスにも聞こえているらしい。


「そもそもこの声はどこから聞こえてんのさ」


「辺りに私達以外の人影は見当たらないみたいだけど」


「いや多分人じゃないと思うな」


「人じゃない……? あぁそういう」


 彼女も察したが、おそらく人ではないだろうな。

 俺の予想が正しければ、この感じは聖剣ちゃんや魔剣ちゃんと同じような存在だと思われる。しかし如何せん俺達の周りにそれらしき影は見当たらない。


『多分マスターのアイテムボックスの中からですね』


『え、ていうかこの声ってまさか』


 ズオオオオ


 そんなこんなしているうちにアイテムボックスの入口が勝手に開いた。


 そこからゆっくりと出てきたのは一冊の本だ。漆黒色の表紙にはびっしりと魔術紋様らしきものが刻まれており薄暗い光を放っていた。やはりというか聖剣ちゃん達と同様にフワフワ宙にと浮いている。さしずめ魔導本グリモワールと言ったところだろうか。


『おう久しいな聖剣のと魔剣の』


 魔導本は聖剣ちゃん達と顔見知りらしい。こういう表現はおかしいかもしれないが、聖剣ちゃん達を女型とすれば、この魔導本は声質や話し方から男型という感じだ。


『おや今日は天から雷魔術でも降り注ぐんですかね。随分と永いこと沈黙を保っていた魔導本が姿を現すなんて珍しいじゃないですか』


『まぁな。随分とおもしれー気配を感じたから思わず目を覚ましちまったよ』


『あ! マスターは魔剣ちゃん達のだから手を出しちゃ駄目だかんねっ』


『あん? マスターってのはこの生意気そうな小僧のことか?』


 いつから俺はお前達のものになったというツッコミはさておき。魔導本は俺の前へと移動すると、此方を舐めまわして見るかのように体をフワフワと動かさせた。


『あー駄目駄目。お前は駄目。俺様、男に使われる趣味ねーから』


 なんだこいつ。燃やすぞ。


『それに比べて、ははーん嬢ちゃん中々に面白い素材だな』


「そうなの?」


『あぁ断然な。そこのアホ面小僧なんか目じゃねぇぜ』


 よし、やっぱりこいつ燃やそう。

 俺はそう強く決意した。






 ◆

【作者からのお願い】

 ここまで読んで頂きありがとうございます!

 よかったら作品フォローと、☆☆☆を三回押してもらえると嬉しいです!(三回じゃなくても大歓迎です)

 下記URLからでも飛べます。

https://kakuyomu.jp/works/16817330667808128473

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る