第13話 異世界転移三日目にして脱出計画決行①

「日本の夜明けぜよ」


「ぜんぜん日本じゃないけれどもね」


 俺の隣に立つアリスは額に手を当ててため息を吐いた。

 いいんだよ。こういうのは雰囲気が大事なんだ。まぁ確かに日本とは似てもつかない光景だけどさ。


 明け方。俺達はこっそりと寝床を抜け出し見晴らしの良いテラスに集まっていた。

 太陽的な存在は同じだが、夜明け前の夜空にはうっすらとまだ月みたいなのが二つ浮かんでいる。まさに異世界。


「ところで決行前に一応聞いておくけど聖剣ちゃん達、俺らのことを元の世界に帰らせたりできないよね?」


『さぁそれはなんとも。私がいくら超絶高性能武器でも魔術師の真似事は業務範囲外ですね』


『アタシも無理というか興味すらないかなー』


 ですよね。なんとなくそんな感じはしていた。


 そもそも異世界召喚なんてとんでも事態はおいそれと簡単に出来るわけもないのだろう。そんなポコポコ簡単に出来ていたら大惨事にもほどがある。王家の秘術的なものなのかな。

 王女であれば何か知っているのだろうが、素直に答えてくれるとは思えない。


「いつの間にかなんか増えているわね……しかも、いえなんでもないわ」


「そういえば一ノ瀬に魔剣ちゃんはまだ見せてなかったね」


 話せば長くは……ないか。三行ぐらいで終わるな。

 具体的には

 宝物庫侵入

 発見

 装備(強制)


 うーんこれ言えねぇな。自分でも軽くドン引きするわ。


「ところで話は変わるけど聖剣ちゃん、ビーム出せる?」


『はい?』


「だからビームだよビーム」


『まぁそりゃ聖剣たるものビームの一つや二つ出せますけども』


 出せるんだ。

 まぁそりゃ聖剣なんだから出せるよな。聖剣ちゃんは俺の質問の意図を図りかねているが、とにかく良かった良かった。これで何の支障もなく計画を実行に移せるというものだ。


「ちょいと失礼。た、他意はないからね?」


「……どもりながら言われても説得力がないのだけれど」


 アイテムボックスから昨夜に調達した一際大きいサイズのベルト取り出し、アリスの腰にぐるり回した。心なしかアリスの視線が冷たい。天地神明に誓って邪な事は考えていないので安心してほしい。具体的には世界平和とか?多分。


『マスターは相変わらず本当にクソ童貞ですねぇ』


『顔真っ赤じゃん。やーいざぁこざぁこ~』


「うるせぇほんとうるせぇ」


「えっと、改めてこれは一体全体どういう状況なのかしら?」


 流石のアリスもこの珍妙な状況に困惑の表情を浮かべた。


「まぁまぁ泥船に乗った気分でまかしておくれよ」


「それ沈むやつじゃない」


 アリスは肩を落としてゲンナリとした。


 さてさて念のためベルトがキッチリと固定されているか確認。生半可な締め付けだと。うん問題ない。ベルトは簡単には取り外せないぐらいに固定されている。これにて準備は完了。


 この時間帯であれば下の階含めて人はいないらしい。視界も良好。つまりはオールグリーン。このままつつがなく進めば俺達はこの王城から無事に脱出することが出来るだろう。


「……」


「明星君? 急に静かにしてどうかしたのかしら?」


 問題はない。そう問題はないはずなのだが。

 古今東西、物事は思うように進まないのが常だ。だいたいこういう時には邪魔が入るのがお決まりなのだ。


 コツンッ


 その懸念が正しかったと裏付けるように、ヒールの先端が石畳の床を踏み抜く甲高い音が耳を貫いた。


「あらあら困りましたねぇ。これは非常に困りました~」


 お決まりもお決まり。音源の方向に視線を走らせると、そこには諸悪の根源第二王女様がいた。









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