第14話 異世界転移三日目にして脱出計画決行②

 「あらあら困りましたねぇ。これは非常に困りました~」


 お決まりもお決まり。当然のように。まるで前世から決められていたことかように俺達の前に王女様諸悪の根源が登場した。


 追手が来ることは予想していた。しかし誤算だったのはまさか騎士でも暗殺者でもなく、王国上層部しかも王女が単体で来たことだ。

 常識的に考えればありえないことだが、それだけ自身の能力に自信があるということだろうか。もしくは完膚なきに舐めているか。


「これはこれは第二王女様じゃあないですか。こんな夜更けにお花摘みですか?」


 とにかく会話をして相手の出方を伺おう。出来るだけ癇に障る言い回し言い方を心掛けた。

 そうした方が時間を稼ぎやすいと判断したからだ。後スッキリするし。


「――これだから異世界人は品が無くて嫌いなんですよ」


「明星君……」


 正体表したね。

 王女の纏う雰囲気が変わり、アリスが息を呑んだ。その覇気たるや凄まじいもので世紀末覇王味まである。


「素が出ていますよ王女様」


「まったく白々しい。私の超絶完璧な美貌に微塵もなびかなかった時点で気づいていたでしょうに。これでも容姿やバストにはそれなりに自信があったので少々ショックです」


 王女は貴女のように冴えなくて微塵の魅力も感じない殿方の分際でと付け加えた。ほっとけ。


「だいだいですね、この異世界召喚にいくら金がかかっていると思っているんですか?」


「凄いや。よく拉致監禁みたいなことしておいてそんなことが言えるよ」


 そりゃそっちの都合ってやつだ。俺達にとっては関係ないし知ったことではない。


「はぁ貴方の戯言に付き合うのはもうウンザリです」


 パチンッ


 王女は勿体ぶるように指を鳴らした。


「ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ・ゴ」


 そしてその王女の動作に呼応し俺らをぐるりと取り囲むように現れた無数の鎧騎士。数にして軽く十数体は超えるだろう。


「明星君これはっ!?」


「うわぁ……幼気な少年少女に大人気なくない?」


「ふふっ、なにせ筆頭勇者様は聖剣をお持ちですからね。これでも足りないぐらいですよ」


 良く言うよ。もし本当にそうなら王女自ら来るもんか。


『ちなみに人の気配を感じません。おそらく王女が操っているゴーレムの類でしょうね』


 成程。

 それによくよく見ると城のいたるところに設置されていた騎士鎧だ。無数に設置されていたそれは観賞用というだけではなかったらしい。さっきの無駄にでかい鎧もこのために存在したのだろう。


「この数は確かに凄いけどこっちには聖剣と魔剣があるんだ。そんな鉄屑共でどうにか出来ると思う?」


 正直どうにか出来るかは不明だ。それでもやるしかないわけでして。

 とりあえず二対の剣をこれ見よがしに構えた。聖と魔。白と黒。まさにキ〇ト君ムーブである。とりあえず二刀流にしとけば強く見えるから不思議。


「まぁ魔剣までをもその手に納めていたのですね。なんとも手癖の悪いお方ですね」


 効果があったのか知らないが騎士鎧達はまだ襲い掛かってこない。心なしか警戒しているように見えなくもない。もしかしてこの魔剣ちゃんも聖剣ちゃんに並ぶ王国きっての兵器なのだろうか。彼女と同じで喋るし。


「ふむ中々に手こずりそうですね――ではこうしましょう」


「へ?」


 王女の言葉を合図に鎧達は襲いかかって……はこずに鎧の内一体に目掛けて一斉に駆け出した。


「……あれは何をしているのかしら?」


 ガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキンガキン


 金属同士が激しくぶつかり合う騒音。

 まるで鎧同士でお互いを喰らい合っている。そんな表現が適当なように思えた。

 こちらが呆然としているうちに、それは一つの塊に成り果てた。


『Gooooooooooooooooooooooooooooo―――――――――――――!!!!!』


 そうして形成されたのは巨大な甲冑ゴーレムだ。

 複数の鎧を滅茶苦茶に固めて手足にしているそんな感じの体躯。大きさは少なくとも一〇メートルは超えるだろう。そして顔に当たる部分の中心には赤い光がこちらを見据えるように灯っていた。


『うわぁ』


『どうするマスター? この敵さんは魔剣ちゃん的にも骨が折れそう~』


 魔剣ちゃん達の言葉に内心同意する。進〇の巨人かよ。


「それでどうしますか? いくら聖剣と魔剣を以てしてもこの子には敵わないと思いますけど?」


 王女は俺達の呆然とするような反応を確かめてから、したり顔かつ演技がかった声音でそんなことを問いかけてきた。

 自分の勝利は一ミリたりとも揺らがない。そんな顔だ。


「明星君……」


 アリスが不安そうに俺の服の袖を掴んだ。

 いつもは冷静沈着な彼女も流石に恐怖感じているようだ。まぁ普通であればそうだろう。なんなら即座に土下座をかまし命乞いをすべき状況だ。


 


 つまり俺がここで選んだ選択はこうだ。


「――それがそんなことないんだなこれが。聖剣ちゃん地面に向けて思いっきりぶちかましちゃって!!」


 次の瞬間、辺りを埋め尽くすほどの眩い光が瞬いた。


 そしてその日、王国城の一画は聖剣が放つ極光にて大破したのだった。







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