第11話 美少女部屋訪問(ノンアポ)



「というわけで一ノ瀬さん。一緒に来ない?」


「というわけじゃないのだけれど」


 そんなわけで夜分遅くにアレかとも思ったが俺は一ノ瀬アリスが就寝している部屋を尋ねた。思い立ったが吉日。案ずるより産むが易し。こういうことは何事もさっさと行動するに限るのだ。

 ちなみに出会い頭、お月様は綺麗ですね的小粋なジョークを飛ばしてみたが全くもってウケなかった。クスン。


「しかしまぁなんというか……この部屋は露骨過ぎるでしょ」


『ま、所詮王国の連中なんてそんなもんですよ』


『これは魔剣ちゃん的にもドン引きぃ~』


 聖剣ちゃん達はアリスに聞こえないよう俺の頭の中だけに聞こえる声で同意した。


 現在、彼女が就寝している部屋は俺とは比べ物にならないほどみすぼらしいものだった。

 何十年も放置され不衛生極まりない倉庫と言っても過言ではないレベル。この部屋を見るだけで彼女のクラスメイトだけではなく王国側から扱いも窺い知れるところだ。本当にろくでもねぇなこの国。


「ねぇ、呆けていないでもう少し説明があってもいいと思うのだけれど」


「あ、はい」


 そりゃごもっとも。


 彼女の反応は極めて冷静なものだった。取り乱すこともなければ声を荒げることもない。真剣に俺の提案を検討しているようだ。好感が持てるね。


 とはいえ急に大した交流もないクラスメイトが夜分に押しかけ逃亡のお誘いをしてきたわけだ。流石にすぐ即決するは難しいだろう。


 とりあえず俺が現状で知っている情報や考えを共有した。王国がどうにもキナ臭いこと。隠し国庫から金銀財宝その他を拝借してきたこと。脱出すること。


「いいわ、その話に乗らせてもらいましょうか」


「まぁそうなるよね……って、へ? まじで???」


 驚くべきことに彼女は何の逡巡もなくそう判断を下した。正直断られると思っていた。

 まぁだいたいの物事は即断即決に限る。時間は有限であり貴重なのだ。


「なによ驚いて。貴方が言い出したことでしょう? それにどの道ここにいてもろくな目に合わないでしょうしね」


 なるほど。当たり前と言えば当たり前だが、彼女自身も俺と同じ認識を持っていたらしい。

 実際、昼間はヤンキーに言い寄られていたわけだしね。彼女がここに残る場合、それは今後更にエスカレートしていくことだろう。


「というか提案しに来た俺が言うのもアレだけど、そんな簡単に信頼していいの?」


「ええ。もろもろのリスクを考慮して判断したから問題ないわ。それにね私、人を見る目には自信があるの」


 アリスは自信ありげにそう言うと不敵な笑みを浮かべた。

 それは俺が女の子に手を出す度胸がまるでないクソ童貞だということだろうか。くそ当たってんなぁ。確かにこの子見る目あるわ。


「じゃあ決行は早朝にしよう」


「その時間帯を選ぶ理由は何かあるのかしら?」


「本当は夜がいいんだけどね。流石に右も左も分からない異世界でそれは厳しそうだ。なら比較的人が少なくて視界が確保できる早朝がいいかなって」


「へぇ……考えなしというわけじゃないのね。いいでしょうそれで行きましょう」


 彼女の中で俺の扱いが気になるところである。


「それでどう脱出するつもりなのかしら?」


「あぁそれは俺に任せておいてよ。なにせとっておきの名案があるんだなこれが」


 ドヤ顔で俺はこの場を後にした。

 それにアリスが怪訝な表情を浮かべたのは言うまでもない。



 ◆



「お、彼処ちょうどいいのが……あったあった」


『王国騎士の鎧ですか。明らかにサイズがマスターに合っていませんし、一体全体何に使うんですか?』


 アリスの部屋を訪れた後、俺は自室には戻らず王城内部をフラフラと徘徊していた。もちろん夢遊病ではないし、脱出計画の為の行為だ。


 目の前には通路を装飾するように設置された大柄な騎士鎧が一体。聖剣ちゃんが言うように俺には着用不可なサイズのものだ。ていうかそもそもこの鎧、俺の三倍ぐらいの背丈があるが着用出来る人間はいるのだろうか。まぁ展示用なんだろうけど。  


「ま、見てからの楽しみってね」


『あ、絶対に変なこと考えてそうな顔~』


 本当はこの鎧の一部分が必要なんだけどね。わざわざその部分だけ取り外すのも面倒だし全部アイテムボックスに放り投げちゃえ。えいや。

 ともかくこれで準備完了だ。まだ決行時間まで少しある。仮眠でもしようかな。


『おや? あれは確か……』


 部屋に戻る道中、一つの影を視界に捉えた。


「あれ? オタク君?」


 影の正体はまさかのクラスメイトであるギャル氏だった。どうにもこうにも。まだまだこの長い夜は終わらないらしい。









 ◆いかがだったでしょうか。


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