第9話 最近の魔剣はメスガキらしい

 そいつは何とも禍々しい雰囲気を放つ大剣だった。

 魔剣の部類なのだろうか。禍々しいと感じるぐらいに全身漆黒だし。秋葉原を往来するオタク達ですらこうはなるまいて。


『あれあれ~そこの雑魚雑魚っぽいお兄さんもしかしてアタシと相性良い感じ~?』


 でもコイツ、性格キャラが何故かメスガキなんだよなぁ。なんでだよ。

 ところで相性が良いって、それは俺が陰キャなことに関係があったりするんだろうか。もしそうなら訴訟も辞さない。


『クンクン、うーんなんか神臭い? まぁいいわぁアタシが上書きしてア・ゲ・ル♪︎』


 おおう。まさにメスガキムーヴ。そのメスガキたるや実際に猛威を振るった日本も真っ青なレベルである。(※あくまで一説であり諸説あります。)

 とにかくこんなとこまで来てこんなのに遭遇するとか異世界って幅広いんだな。


『クンクン、本当にくっさぁ~~~!』


 そういうのも分かる感じなんすね。


 しかし神臭いと言われても当然陰キャたる俺にそんな要素はない。もし本当にそうだったなら地を這うナメクジの如し陰キャライフなどしていないだろう。


 まぁ十中八九聖剣ちゃんのことを指しているのだろう。そして当の本人はというと大変ご立腹そうだった。


『ちょっ、マスター駄目です駄目ですよ! マスターには超絶優秀五身合体聖剣がいるんですからね!? 浮気は許しませんよ!!』


 お前はどこぞの戦隊ヒーロー合体ロボか。そんな浪漫が迸る機能ないだろ。え? 流石にないよね?

 聖剣ちゃんはなんか切羽詰まる雰囲気だ。具体的には冴えない主人公に学園一の黒髪清楚美少女の影がちらつき始め、急に焦る幼馴染って感じ。


 ていうかこれ浮気判定に入るんだ。


『これからよろしくね~雑魚雑魚マスターさん?』


『駄目ですよ駄目! 浮気は許しませんからね!!』


 喋る聖剣が存在して、しかもそいつの提案の元、銀行(国庫)強盗を実行に移している現在。

 これだけでもかなり混沌カオスな状況なのに、事態は更に混迷を深めていくのだった。



 ◆



 とにかく何においてもまず肝心なのは現状の把握だ。エロゲーだって18禁かどうか確認して買わないと後で泣きをみることになるわけだし。ほら最近全年齢版とか多いですしおすし。


 とりあえず魔剣に俺達やその周辺の状況を包み隠さずに伝えた。


『へぇ~今の王国ってそんな感じになってるのねぇ』


 どうやらこの魔剣は相当前に封印されたものらしい。本人の言い分を要約すると、なんか昔に王国がマジ論外でテンションマジダダ下がりムカ着火ファイヤーなんだってさ。ふむ全く分からん。


 魔剣の言い分はさておき、聖剣ちゃんは何故かバチクソ偉そうだ。


『一応私の方が先輩なのでキチンと敬うように。メロンパン的なのは三秒以内に買ってこないとお話になりませんよ?』


 体育会系かな? 

 我らが聖剣様は自らの立場を確固たるものにすることに余念がない。魔剣がついてくることは諦めそっちの方向にシフトするらしい。


 というかいつの間にかこの魔剣も俺についてくる流れになっている件について。俺の意志イズどこ。

 まぁいっか。既に聖剣とかいう取り外し不可の呪いの武器同然なのが強制装備されているわけだし。今更一つ増えたところで変わらないし。

 それにこれからのことを考えると戦力はあるに越したことはないだろう。この魔剣がどのぐらい強いのかは知らないけど。


「聖剣ちゃん聖剣ちゃん改めてこの魔剣?に心当たりとかないの?」


『うーん私も常時覚醒しているわけではないですからねぇ。心当たりがあるような無いような』


 使えんなこのクソ聖剣。


『お兄さ~ん、女の過去は詮索しないのがマナーだよ~』


「やっぱり女の子なんだ……」


『ツッコミどころはそこなんですね』


「いやいやむしろ一番大事と言っても過言じゃないまである」


 だって君ら声音や口調はおもっくそ女の子なのに見た目はバチクソ武器だからね。脳がバグりそうになるし、変に不満を持たれても嫌ですしおすし。それにどうせ図々しいコイツのことだ。そのうち女の子扱いを求めてくるに決まっている。


 魔剣は俺らのやりとりを見て何を思ったのか笑い声を上げた。


『クスクス、とにかくこれから楽しいことになりそうね。改めてよろしくマ・ス・タァ♪』


「あ、はい」


 まさにメスガキ。この魔剣にもし顔があったならさぞニヤニヤした表情が張り付いていたことだろう。



 影 人 は 魔 剣 を 手 に 入 れ た(取り外し不可)



 あ、ちなみに国庫の中にあった金銀財宝その他はその一切合切をアイテムボックスに放り込んどきました。


 




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