第6話
「えっ!? いえ、その――何て言えば良いかしら……」
「ロアも知らないの?」
「そ、そういうワケじゃないけど……うーんとね、少し説明が難しいのよ」
「じゃあ、サフィラスは知ってる?」
「そうだね、基本的な原理は花と同様で――」
サフィラスが説明しようとした瞬間、ロアに口を塞がれる。
「……ストップ。ストップよ、サフィラスちゃん」
不服を視線で訴えると、ロアが眉を顰める。
「まだ10歳そこそこの子には、早いと思うの」
「――」
数秒後、サフィラスはロアの手を外し目を伏せる。
「……すまない、どうやら私とは基準が異なるようだね。今後この話題に関する発言には、細心の注意を払うことにするよ」
「基準……? え、ええ。お願いするわ」
するとリベラは、バツが悪そうに頭を下げた。
「っ、ごめんなさい! 聞いちゃいけないってこと、知らなくって……!」
ロアは困ったように笑うと、「顔を上げなさいな」と告げる。
「良いの良いの、気になるのは悪い事じゃないのよ。ただ、この質問は少しデリケートでね。リベラちゃんが立派なレディーになったら、学んでいきましょ」
「うん!」
「――おや、性教育も立派な勉学の一つだが?」
三人がドアの方を向くと、其処には村長が佇んでいた。
「えっと、せい……?」
リベラが村長の言葉を復唱しようとすると、ロアは首を横に振る。
「……先程は礼を欠いた言動をとってしまい、大変申し訳ございませんでした。そして、
「何、構わんよ。村長であるワシが許そう。 ――それはさておき、村を気に入ってもらえて何よりだ。他にも貸し教室はある故、滞在中占有していても良いのだぞ?」
「……お気遣いありがとうございます。ではお言葉に甘えさせていただきまして、三日ほどお借りしてもよろしいでしょうか?」
「うむ。だが、たった三日で良いのか? 中長期の滞在も受け入れるぞ?」
「はい。私どもには先約――果たさなければならない使命がありますので。 ……では、失礼します」
ロアは一礼してドアを抜けようとするも、村長は微動だにせず。漂い始めた緊張感の中、ロアは村長を見据える。
「えっと……恐れ入りますが、通していただけますか? 宿泊先を探したく思います」
「宿か。確か一室、スイートルームが空いていたな。押さえておいてやろう。そうだ、ランチはまだか? 村で一番腕が立つシェフがおるのだが」
「いえ、あの……本当にお構いなく――」
一向に道を譲る気配が無い村長に、サフィラスは一歩前に出る。
「先程は助かったよ。けれど、宿は自力で手配する。昼食も同様に。故に、気遣いは不要だよ」
「……そうか、どうやら過ぎた親切心だったようだ。今後はワシからのコンタクトは控えることにしよう。貴君らの旅の無事を祈っておるぞ」
一転素直に下がる村長に不信感を抱きつつ、サフィラス達は部屋を離れる。
「――ふん、小賢しい奴め。出来るものならやってみると良いわ」
そう言うと村長は、手に持っていた金の鍵を胸元のポケットに忍ばせた。
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