第34話
そう言ってリベラに目線を合わせると、彼女からは真っ直ぐな眼差しが返ってきた。
「うん。私だけじゃなく、ケインたちも願ってると思うから。だから、お願い……!」
「……であれば、最後に彼女の本心を聞かねばならないね」
もはや一刻の猶予もない中、サフィラスは立ち尽くすエルリカに歩み寄る。そしてただ一言、静かに問い掛けた。
「――キミにとって村長は、救うに値する存在かい?」
「……うん、勿論よ。でも……私は、あなたを利用した。そして、あなたの大切な仲間を巻き込んでしまった。それでも、私のワガママを――村長を助けてくれるの?」
「ああ、不本意ではあるけれど。彼の再起を望む者が多数いるのであれば、手を差し伸べよう。しかし、その後の対処はキミ達に担ってもらうよ」
「……! その――よろしくお願いします!」
力強く頭を下げるエルリカに、サフィラスは血溜まりにしゃがみ込む。そして、戸惑うユールとアイラをよそに、村長の腹部に手を添えた。
「――
言葉を紡ぐサフィラスの左手を中心に、柔らかな光が患部を包み込んでいく。やがて村長の青褪めた顔は和らぎ、安らかな寝息が微かに聞こえ始めた。
「……
そして、村長の胸部に深く開いた傷はたちまち塞がり、床を濡らす血溜まりも、部屋一帯に立ち込める生温い臭気も、跡形もなく消えていった。
一方で、眼前で執り行われる面妖な儀式に、ユールは声を震わせ呟く。
「これは……あなたは一体、何者なんですか……?」
アイラも怯えた様子で見守る中、サフィラスは術を込め続ける。
◇◇◇
そして、数十秒経った後。村長は不意に目蓋を開いたかと思うと、大きく咳き込んだ。
「――げぼげほ、ごはっ! む、ワシは一体何を……って、なんだねこの集まりは!」
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