第31話
ケインも鼻の頭を
「オレたちにとっちゃ、村長は親みたいなもんだからな。自分で考えられる年になったし、そろそろ“親孝行”ってヤツをしてみたいのさ。な、アイラ」
「うん……!」
気持ちを高め合う三人に、ロアは密かに葛藤する。
『……作戦終了の予定時間まで、あと30分。それまでは、誰一人として歴史館に目が向かないように留めておいてほしいって頼まれたけど――』
「たとえ如何なる理由であろうと、計画を妨げる要因を生み出してはいけないよ」と、サフィラスから刺された釘を思い出す。忠告と共にリベラに渡された笛の効果は、音色を聴いた者を奏者以外眠らせるというものだったのだが、未だに耳を塞ぐ合図は送られて来ず。
『こんな熱いエピソードを聞いて、揺らぐなっていう方が無理よ。 ……ね、そうでしょう?』
隣に座るリベラは彼らの過去に同調し、もはや鶴の一声を待つばかり。ロアは手の上に乗ってきたネーヴェに気が付くと、意を決して口を開く。
「皆に、質問しても良いかしら。リベラちゃんにも聞きたいことなんだけれど」
「! うん、どんなお話?」
表情に花を咲かせるリベラに、ケインとユール、アイラもロアの方を向く。
「……今歴史館に行けば、村長に会える。アタシとリベラちゃんがその手伝いをするって言ったら、皆はどう思うかしら?」
◇◇◇
物語は、村長が穿たれた現場に切り替わる。吐血に口を汚す村長に、エルリカはゆっくりと剣を引き抜いた。
「ガハッ――」
「……ごめんなさい、ごめんなさい村長! でも私、あなたを助けるにはこの方法しか思いつかなかった!」
「ワシを、助ける……? エルリカ、お主は……何を、言って――」
言葉半ばで床に崩れ落ちる村長に、エルリカは抑えきれない嗚咽に咳き込む。その傍らに佇むサフィラスは、広がりゆく血溜まりを見下ろしながら、静かに口を開いた。
「……成程。キミはこれ以上彼が罪を重ねる前に、手ずから断罪したかったということかな」
「ううん、違う、違うの! 私はただ、いつもの優しい村長に戻ってほしかっただけ! それなのに、それなのに私は――」
「エルリカ。一つ尋ねても良いかな」
「えっ……な、何?」
「キミは先程村長に、剣の真価について入れ知恵していたように見えたけれど。 ……その様子だと、本当は自身も把握していないだろう?」
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