第16話
道中は絶えず雑談が飛び交い、ロアとリベラはにこやかに足並みを揃える。その果て――豊満な身体を揺らす村長が立ち止まったのは、昨日サフィラス達が利用した建物の川向かいだった。
「着いたぞ。園内のいたる所で生徒らが駆け回っておるから、曲がり角には注意してくれたまえ」
周囲の建築物より頭一つ抜けている、
受付窓口で村長が顔を見せると、椅子に座りながら船を漕ぐ男は飛び上がり、扉に駆け付け解錠する。
そうして学校の内部に足を踏み入れると、早速三人の子供達が村長に駆け寄ってきた。
「あ、村長だ!」
「今日も来てくれたんですね!」
「会えて、嬉しい……です」
「うむ。ケイン、ユール、アイラ。みな元気でやっているかね?」
すると、ケインと呼ばれた
「オレはめっっちゃ元気だぜ! よっ、と――ほら! 最近、片手でバランスもとれるようになったんだ! あとあと、スポーツテストも学年で一位だったんだぜ!」
「おお、ケインは相変わらず運動の才が溢れておるな。だがくれぐれも、調子に乗って怪我をするでないぞ?」
「おうさ! おっ、とと……」
ケインの一つに結われた
「村長、ぼくも成長しました。スポーツテストでは彼に負けましたが、この前の期末テストでは学年で一位でした。次のテストも、その次のテストも、一位であり続けてみせますから見ていてください!」
「流石はユール、学年のブレインと言わしめるだけはあるな。次回以降も大いに期待しておるぞ。ただし、睡眠はしっかり取るのだぞ」
「……! はい!」
ユールが
「アイラは……ケインとユールみたいに、すごいとこはないけど……情報を集めるのは得意だから、村長にとっておきのニュースを言うね。えっと……一週間くらい学校をお休みしてる、ジェイドっていう子がいるの。先生たちが頑張って探してるんだけど……どこにもいないみたい」
「――ふむ、心配だな。後で教師にも尋ねてみるぞ。それとアイラ、そう自身を卑下するでない。細やかな観察こそ、時として人の支えとなるのだからな。伝達、助かったぞ」
「えへへ……」
アイラの桃色の瞳が喜びを纏うと、ユールは遠巻きに立つリベラを指す。
「ところで村長。その子も入学するんですか?」
「いいや、入学はしない。見学だけだ」
「……そうですか、残念です」
アイラも頷くと、落胆の声を上げる。
「うん……残念。女の子のお友だち、増えると思ったのに……」
「すまんすまん。だが、落胆するにはまだ早いぞ。実はな、来週此処に入学する少女がおるのだ」
すると姿勢を正したケインが不意に大声を出し、村長に歩み寄る。
「マジで!? 顔はカワイイ?」
「こら、ケイン。失礼だぞ」
「そうだよ、そういうの良くないよ……」
ユールとアイラがケインを諌める中、村長は歯を見せて笑う。
「フハハッ! ケインの積極性は、止まる所を知らんな。案ずるな、天真爛漫で可愛らしい娘だ」
「よっしゃ! オレ、ちょっと勝負服用意してくる!」
「制服なんだから、どれも同じだろうに……」
ユールが呆れ顔で小さくなっていく背中を見送っていると、村長はチッチッと指を横に動かす。
「それがケインの
「はい」
「また、来てください……」
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