2-①
さて、前置きが長くなった。
ここで改めて、土岐田家の面々について紹介しよう。
長男、
呼び名はハル、または
市立病院付属の看護専門学校3年生で来年の春には看護師になる予定。
男女比1対5の女性優位の中で、必死に学生生活を送っている。
今は病院など実際の現場で学ぶ臨地実習をしながら、国家試験目指して勉強中という状態なのだ。
が、実習後、最終レポート提出を終えて、次の実習に向かうまでのわずかな期間は、比較的のんびり体も頭も休めている。
と言っても、その休暇も結局かわいい
次男、
呼び名はキリ、または
この春、徒歩10分の所にある県立高校に入学したばかり。
中学生まではリトルシニアリーグに在籍し、入学そうそう野球部に入部した野球少年である。
県立
城北は文武両道がモットーで、学力の方もかなり求められるが、要領よく勉強の方もこなし、すんなり合格してしまった。
愛嬌があり、人気者で、実は「彼女」といえる存在もかつてはいた。
が、野球優先のキリに愛想を尽かしたため破局。
別れ文句は、
「私と野球、どっちが大事なの」
で、こればかりはキリも譲れず、
「野球」
と答えた。
ちゃっかり者だが、信念は貫く、熱血漢だったりする。
三男、
呼び名はナミ、またはチイ兄ちゃん。
小学六年生ながら(というか、家族の中で)、一番朝に強く、家事も上手い。
中でも料理は、大の得意。
料理上手でレシピを見れば一発で暗記する。
更に自分なりの工夫を加えてレシピ以上の料理に仕上げることに執念を燃やす。
野菜は桂むき、飾り切りまでこなす。
魚は丸で買ってきて、お造りもこしらえる。
現在の目標は片手返しでオムレツを作ること。
オマケに家計の遣り繰りまで考えてくれる、しっかり者の小学6年生である。
長女、
呼び名はメイ、またはメイちゃん。
言わずと知れた、
生後間もなく母親と死別し、写真でしか母親の姿を知らないが、そんな生い立ちを微塵も感じさせない、明るくおしゃまな女の子である。
生後2ヶ月から日中は保育園で過ごしている。
その愛らしさに、誰かに拐かされるのじゃないかと、父や兄達をヒヤヒヤさせている。
人見知りもせず、誰にでもなついていくので、さらに過保護ぶりはヒートアップしていく。
その溺愛ぶりは、成長しボーイフレンドでも出来た日には、血の雨が降るのは避けられない、とご近所でもっぱらの噂である。
そして。
家長、
38歳。
計算ではハルは
実は、
両親を早くに亡くした
父の妹の夫である叔父の家で世話になりながらも、
縁あって
しかし、親族、後見人でもあった叔父は、
というか、唯一の反対者が、叔父だった。
裏を返すと。
法律上、後見人に任されているのは
が、実は財産の幾ばくかを自分の経営する会社の資金に当てていたのだ。
会社の経営が軌道に乗ったら補てんするつもりが、出来ないままズルズル流用していたのであった。
結婚すれば、財産の管理は当然
ことの露見を怖れて、結婚に反対していたのだ。
……と書くとまるで莫大な財産があるかのようだが。
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