勇者の住んだある村のお話

吟遊詩人

遠い昔のお話

やあやあ、これを読む諸君。


こんな面白みのないタイトルの話を見てくれるなんてなかなかの物好きもいたものだね。


最近母が他界してね。遺言に、この話は他のものに伝えてくれと言われてしまった。


ずっと1人で村に住んでたんだからもっと何かが欲しいとか我儘いっても良かったと、僕は思うんだけどね。


、、、、、、、、、話が続かないね



もういいや。では早速聞いてもらおうか。






これは、とても遠い昔のある村のお話だよ。



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昔々、遠い昔。


人族と魔族。二つの種族が争い合っていました。幾年も戦いは続き、いつこの戦いは終わるのかと人々が諦めかけていました。


しかし、その戦いに突然終止符が打たれたました。ある小さな村の青年が魔族の王を殺したのです。

王を殺された魔族たちは混乱し、それに乗じた人族の兵士たちがあっという間に魔族の軍、その後は魔族の女子供などの非戦闘員を殺していきました。


幾年も続いた争いは魔王を倒した後わずか数日で終結。あまりにあっけない最後でした。



人族の王が青年に言いました。

「勇者よ。汝はあやつらの王を殺すと言う偉業を成し遂げた。何か褒美をとらせよう。何を望む、、、?」

青年、ひいては勇者はこたえます。

「私の望みは妻との平穏な日常です。これから他の国が私を戦力にしようと何か手を出してくるでしょう。その者たちの対処を願いたくございます。」

「ふむ。王たるワシに害虫掃除を頼むとは、なかなか豪胆な者じゃのう。さすがは勇者というべきか。その願い聞きいれよう。」


そうして勇者は生まれ故郷に妻と共に戻りました。最初は外の者を警戒していた村のものたちでしたが、妻はとても優しい心の持ち主であり、何事にも進んで学ぶ姿勢から、村のものたちともすぐ仲良くなりました。


そんな妻は常に頭に布を巻いていました。村の人たちは髪の毛がないのだろう、あの歳で可哀想に、、、と本人には言わないものの勝手に空想を広めていました。


ある日、妻がいつものように村人たちと畑仕事をしていました。すると村のイタズラ好きな子供が妻の頭の布を奪ってしまいました。

すると、子供は途端に泣き出してしまいました。何事かと思い村人たちが見に行くと、妻の頭を見てある者は腰を抜かし、ある者は叫び声を上げました。


 





妻の頭からヤギのようなツノが生えているではありませんか。






村のものたちは勇者に問い詰めました。

「あの女はなんだ!?頭にツノが生えているじゃないか!!」

「魔族じゃないか!なぜこの村に呼んだ!!!」

「魔族は全て殺したんじゃないの!?」

「私の孫は兵士になって魔族に殺されたんだ!!」

「俺はあの戦場で魔族と戦ったからあいつらの恐ろしさを知ってる!あいつらは悪魔だ!!!なぜこの村に置いている!!??」


と、魔族に対する恐れ、戸惑い、憎悪などを勇者にぶつけました。しかし、勇者はそんな村人たちの声に対して淡々と答えます。


「彼女が魔族なのは知っている。なぜなら彼女は魔族の王から託された彼の娘だからだ。」


さらに村人たちはざわめく。


「尚更なぜこの村に置くんだ!!魔族の王の娘ならば恐ろしい力を持っているに違いない!!!早く娘を出せ!殺してやる!!!」


と騒ぎ立てます。しかし、勇者これに対して一喝します。


「黙れ!みんなは今まで何を見てきた!!!

この中に魔族と戦い、その恐ろしさを見てきたものもあるだろう!!そんな魔族たちと彼女が同じように見えるか!!!!!」

「っ、、、、、、、、!」

「今までの彼女の優しさやその笑顔が偽物に見えるか!!!!!!」

「っ、、、、、、、、、、、、、、、!!」

途端に村人たちは黙り込んでしまいました。


するとある子供が言いました。


「あのおねえちゃん、、、。ちょっとツノはこわかったけど、いつもやさしくて大好きなんだ。だからっ、、、、。いなくなっちゃいやだよぅっ、、、。」


「、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、」


「争いは終わった。だが心の中でまだ魔族を憎む者たちがまだいるだろう。その者たち私に対してその憎しみをぶつけなさい。」




村人たちは何も言えません。それもそうでしょう。

彼女、妻が村の人たちに向けていた思いや笑顔は本物だったのですから。




「、、、、、、本当に、アンタはあの魔族みたいに、俺らを襲わないのか、、、、、、?」



恐怖で声が震えているある男が聞きました。

すると妻は、そんなことしません。私はこの村も皆さんも、人が大好きですから。と、涙を流しながらいつもの笑顔で答えました。

村人たちは恥じました。自分たちは彼女にあれだけの罵声を浴びせたのだ。なのに彼女は私たちにいつものような優しい笑顔を向けてくれる。そんな彼女をなぜ他の魔族達と同じだと思ってしまったのかと。



それ以降も、村人たちは彼女を今まで通り人として接することを決めました。当然、反対者は誰1人としていませんでした。


そしてそれ以降は、彼女と村人たちとの仲は良くなり、今回も強固なものとなるのでした。



そんな勇者と妻にもついに子供に恵まれました。

その子供も一本のツノを持っていました。

しかし村人たちはそんなことは気にしません。だってこの子もまた、自分たちと同じ人なのですから。



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話はこれでおしまいだよ。

いや〜ありきたりな話かと思うかもしれないけど、少しは楽しめたかな?


え?勇者たちはその後どうなったかって?

ちゃんと天寿を全うして老衰で死んだよ。

その妻も魔族ゆえの長寿で長生きだったけど、最近夫の元へ旅立ったよ。

村はサビレテとっくに人はいないけどね。


2人の子供はどうしたかって?

ふふふ、どうだろうね。もう死んじゃったかもしれないね。ずーーーーと昔の話だしね。



ひょっとしたら、実は案外目の前に居たりしてね?















 













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