第22話―忌むべき過去と現在の在り処2―
高校から
そこで待ち合わせ場所として指定された。
制服を着ての仲良く二人きりで学校を出るのは変な噂の種にされないための事前の対策。
俺は普段しないスマホでずっと放置していたゲームで待つ。
「おまたせ。待たせたかな?」
しかし、なんで急に俺なんか食事に誘うのか。
ただの天然……では無いのは異能で内面を見てきたから知っている。
「うーん……どういうことか」
「うん?おーい、私の声を聞こえていないの」
「聞こえていますよ五穀舞さん」
「ぬぅ。ワザとやっていない」
ベンチから腰を上げる俺に恨めしそうな上目遣い。
五穀舞にゴメンゴメンと謝る。
さて女の子と初めて外食だ。
それだけなら
舞い上がってしまう気持ちと同時に、釣り合わないことの劣等感。
それに異能を勝手に使った事の罪の意思が申し訳なさ過ぎて強く断れかった。
「あの、考え直しませんか五穀舞さん。
こんな俺なんかと店に行くのは良くないというか。それに怒っているし」
「別に怒っていないけどね。
これは私のためでもあるの。恩を長引かせるのは私にとっては落ち着かないんだよね」
もしかしてそれが本音。
恩を残さず、すぐに返したいから?
俺は五穀舞の背を付き従うようにして賑やかな街路を歩く。
連れられて入ったのは至って普通のファミレス。
しかしそれは外装のイメージ。
出入口に入れば中は異世界。
古風なカフェよろしくな鐘を鳴り響いて、
接客業を勤しむバイトの大学生は丈の長いメイド服
を着飾っている。
更に店内に置かれている本棚には洋書、漫画、小説などのタイトルが並べられていた。
それに内装はレンガに飾られる絵画は富士山や鳥獣戯画のような絵のタッチをした動物がいきいき描かれている。
「なんていうか……和風と洋風がセットにしたような雰囲気ですね。
五穀舞さんらしいレストランを選びましたね」
「えへへ、気にいてくれた?
あと敬称で呼ばないように。
和洋折衷でしょう。ここは穴場スポット的だったなら教えた私は鼻が高いよ。
でも自由すぎて苦手な人もいるんだけどねココは」
奇抜なデザインにした店長のセンスがいいのか。
兎にも角にも五穀舞の嗜好を共有している。
さながら異能を対象した頻度からの強い感化されてかは定かではないが深くは考えないようにしよう。
席に案内されて注文を頼み、店員が去るのを視線を追う五穀米。
「斑鳩くん、どうしてか訊かないんだね」
「えっ。話がちょっと?」
「あはは、ごめんなさい。
……ほら私が変な人に大変な思いを受けた時」
「あ、ああ……なんていえばいいのか……ご心中をお察しします。
触れないよう避けていたんですよ。
そのナンパ事件は話せる範囲で結構なので。
苦しかったら言葉をしなくていいですので」
直接的な表現をせず俺は
露骨な言い方すればトラウマ。きっと何ども想起しただろう掘り起こすことになるため。
「そこまで心配されるなんてね。優しいんだね」
「優しいなんて……そんなことは」
「そこは満更なさそうに態度するものだよ。
そう否定したら良くないよ。自分を低く見過ぎ」
真摯的に五穀舞から
これが自分には妥当だと思いながら。
俺は反省したと笑顔で反応を示すが心を読まれたか五穀舞は曖昧に笑うのであった。
注文したコーヒーがテーブルに運ばれて手前に置いてくれた。お互いコーヒーをひと口。
カップを置き、咳払いしてから口をふたたび開く。
「ランニングしていたら声を掛けられてね。
断っても執拗的で。
そのあと無理やり剥がして触れて……」
「……そう、だったのですか」
どう適した返すべきか。
言葉が見つからず月並みにしかなかった。
「ひどい事されたけど負けないつもりだよ。
あはは、私の話をする予定は無かったのだけどね」
「いえ、いつでも聞きますよ。
こんな俺でよければ」
「そう?ならそのときは頼むね。
よし、スッキリ。これを飲んだらボーリングしようよ斑鳩くん」
ため込んでいた感情を吐露したあとからか五穀舞。
和やかな笑顔でこちらを直視する。
対面する位置なので視線はすぐ絡み合うため俺は逸らす。
「それにしても困りました。俺そこまで金銭ありませんけど五穀舞さん」
「……また。これも奢りだよ。
それと私のことは五穀か舞と呼ぶように。
私たちは今から友達ね」
あどけない微笑で五穀舞に俺はつい放念してしまうのだった。
こんな軽い流れで友達になるものかと。
その呆気ない友情の1ページが刻まれた。
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